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貧血の治し方まるわかり | 貧血サポートラボ

鉄分の吸収のカギをにぎる「ヘプシジン」とは?

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酸素の運搬をはじめ、生命を維持するために鉄分は必須。

その吸収や、利用の調節に関わる分子が明らかになってきたのは最近のことです。

ここでは、私たちの体内の鉄分がどのように存在し、どのように吸収されるのか。また、体内の鉄調節における「ヘプシジン」の役割についてご紹介いたします。

貧血や鉄分不足を改善するための情報として、ぜひお役立てください。

貧血と鉄分の関係

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貧血とは、血液中のヘモグロビン値が基準値を下回っている状態。

なぜヘモグロビンが少なくなったのか、その原因ごとに種類があります。

その中で最も多い原因は鉄分不足

鉄分が不足するとヘモグロビンの合成に悪影響を及ぼし、その結果「鉄欠乏性貧血」を発症します。

生理による定期的な出血、妊娠・出産、ダイエットや偏食などによって、女性のほとんどはが鉄分不足の状態、つまり貧血の予備群だといわれています。

鉄分不足の影響

鉄分不足が招くことは貧血だけではありません。

鉄分は、私たちの感情をコントロールしている神経伝達物質にも大きく関係しています。

不足することで「うつ病」や「パニック障害」の原因になるともいわれています。

また、筋肉を動かすエネルギーをつくりだすシステムにおいて欠かせない物質のひとつが鉄分です。

不足することで、エネルギー代謝の効率が悪くなり、体がおもうように動かないばかりか、ダイエットなどにも大きな影響がでてしまいます。

鉄分はどのように存在してる?

私たちの体内には3~4gの鉄が存在しています。

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その中で、60~70%と大半を占めるのが、血液中の「ヘモグロビン」に組み込まれている鉄で、ヘム鉄として存在しています。

残りの30~35%(約1g)が、貯蔵鉄として肝臓や脾臓、骨髄に存在します。

さらに筋肉では、酸素を貯蔵するために「ミオグロビン」として3~5%、血液の中で鉄を運ぶために使われる「トランスフェリン鉄」として0.1%存在します。

鉄分が吸収される流れ

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体内の鉄の量は、さまざまな仕組みによって、とても厳しく調節されています。

体内で使われるほとんどの鉄はリサイクルされた鉄です。

トランスフェリンという鉄の運び屋さんによって骨髄へと運ばれ、ヘモグロビンの合成に使われます。

また、少量の鉄が食事によって、腸から吸収され供給されます。

赤血球は毎日なくなっています

赤血球の寿命は120日です。

そのため、毎日 1/120 の赤血球が分解され、そしてまた新たにつくられます。

老化した赤血球は、おもに脾臓内のマクロファージが食べて分解することで、1日に20~25mgの鉄が回収されます。

マクロファージとは、免疫機能の中心を担う白血球のひとつです。

老化赤血球にあった鉄は、ヘモグロビンからフェリチンへと移行したのち貯蔵されます。

こうして貯蔵された鉄の1部が休みなく血中へと供給され、循環を繰り返し、一定量の鉄を保っているのです。

鉄のリサイクル

分解された鉄は体の外へ排泄され、新たにつくられる際に必要な鉄分は、食事のみによって吸収されているかというと、そうではありません。

分解された鉄はリサイクルされます。

体内には、鉄分を排出するための機構は存在せず、汗や粘膜,上皮細胞の剝離などで少量が失われるのみです。

この少量の鉄が、食事によって補給されるわけです。

具体的には、赤血球がつくられる際には20~25 mgの鉄が必要ですが、そのうち食事から吸収される鉄は1~2 mgで、それ以外はリサイクルされた鉄によってまかなわれています。

トランスフェリンで骨髄へ

リサイクルされた鉄と、食事によって吸収された鉄は、トランスフェリンと結びつき骨髄へと運ばれます。

トランスフェリンとは、血漿の中に存在する、鉄を運ぶためのたんぱく質です。

鉄分の調節

トランスフェリンと結びつくためには、食べ物からの鉄は腸上皮の細胞から、再利用された鉄はマクロファージから、それぞれ細胞の外へと排出される必要があります。

この排出を担うたんぱく質がフェロポーチンです。

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腸上皮細胞やマクロファージでフェロポーチンがたくさんあれば、トランスフェリンに受け渡される鉄が増えます。

つまり、体内で利用できる鉄が増えることになります。

逆にフェロポーチンが少なければ、利用できる鉄が少なくなることになります。

フェロポーチンの調節

フェロポーチンの量は、私たちの鉄利用にとって、とても重要なものですが、それを調節している分子が、肝臓から分泌されるヘプシジンです。

ヘプシジンはフェロポーチンと結びつき、細胞内リソゾームへと誘導することで、フェロポーチンを分解へと導きます。

細胞内リソゾームとは、細胞内の代謝物や不要物を処理するところ。

つまり、ヘプシジンが多い状態だと、 フェロポーチンが分解され、その結果、細胞から血液へ鉄が送り出される量が少なくなります。

したがって、ヘプシジンは体内の鉄利用を抑制するものといえます。

鉄分の吸収はヘプシジンによって変化!

鉄のバランスは、さまざまな要因によって決められていますから、ヘプシジンがあらわれる量も、たくさんの因子によって調節されています。

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鉄の吸収が変わるケース

ヘプシジンの量は、おもに次のような状態によって変化し、鉄の量を調節しています。

  • 細菌感染や炎症
  • 体内の鉄飽和状態
  • 造血シグナル
  • 低酸素シグナル

細菌感染や炎症がおきているとき

細菌感染や炎症がある場合では、鉄を栄養源とする細菌や酸化ストレスからの防御反応としてヘプシジンが増えます。

この状態が続くと、血液中送り出される鉄が制限され続け、結果的に鉄分不足となります。

体内の鉄量など

体内の鉄飽和状態(鉄分が満たされているか否か)、骨髄からの造血シグナル、低酸素シグナルなども、ヘプシジンの分泌を変化させることが分かっています。

つまり、ヘプシジンの量を、さまざまなパターンごとに制御することで、そのときの状態に合わせた鉄量の調節を行っているのです。

食事からの鉄補給は重要なの?

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鉄のほとんどがリサイクルで利用されているのなら、食事からの鉄は重要ではないのでしょうか?

答えは「NO」です!

わずかな量ながらも、毎日鉄が失われることを考えれば、一定の鉄の補給が必要です。

食事からの鉄補給はとても効率が悪いため、かんたんに体内の鉄量は負のバランスへと傾きます。

定期的に月経で鉄を失う女性に、鉄分不足(鉄欠乏性貧血)が多いのはそのためです。

さらに病的な出血が加わると、鉄分不足はさらに加速してしまいます。

食事からの鉄吸収

食べ物にふくまれる鉄分は、おもに十二指腸、空腸上部というところで吸収されますが、食事に含まれる鉄は非ヘム鉄とヘム鉄の2種類あり、それぞにれ吸収のしかたが違います。

非ヘム鉄の吸収

非ヘム鉄(3価鉄)は、腸管上皮の腸管内腔側細胞膜に存在するDcytb(duodenal cytochrome b)によって 2 価に還元されたあと、DMT1を介して吸収されます。

ヘム鉄の吸収

ヘム鉄は別のトランスポーターであるHCP1(heme carrier protein 1)によって吸収されます。

基本的にヘム鉄の吸収率は 10~30%、非ヘム鉄の吸収率は 1~8%とされていて、ヘム鉄の吸収率が高いことで知られています。

吸収率は変化する!

くり返しますが、鉄の吸収は、体の状態に合わせて、ヘプシジンによって調節されています。

体内の鉄が十分な状態と、不足している状態とでは、鉄の吸収率が格段に違ってくるのです。

さらに鉄分不足の状態では、非ヘム鉄の吸収に必要な「Dcytb」「DMT1」が増え、「フェロポーチン」「ヘプシジン」による調節の変化から、より多くの鉄を吸収できる状態になります。

その吸収率はヘム鉄を上回るほどです。

大切なことは「把握」すること

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鉄分不足が続くと、まずは貯蔵鉄が減少します。

次に血清鉄、最後にヘモグロビン鉄が減少し、貧血が明らかになります。

つまり、貧血となる前の潜在的な鉄分不足(かくれ貧血)を経て、さらに鉄分不足が進むと貧血の発症へと至ることになります。

貧血が多い年代

実際に、鉄分がもっとも必要とされる時期が成長期です。しかし、貧血がもっとも多いのは閉経前の女性です。

成長期ではかなりの確率で鉄分不足の状態にありますが、貯蔵鉄で鉄を補っているので貧血に至る人はさほど多くありません。

一方で,閉経前の女性では、長く続いた鉄分不足から貯蔵鉄は空っぽになり、鉄分不足にとどまらず、10~20%の人が鉄欠乏性貧血を発症しています。

フェリチンで鉄分不足を把握

体内の貯蔵鉄を最もするどく反映する指標が「血清フェリチン値」です。

血清フェリチン値は基本的に、鉄分不足では低い値を示します。

鉄欠乏性貧血に至る前の状態では、ヘモグロビン値は正常ですが、フェリチン値が低下している場合がほとんどです。

健康診断などで、ヘモグロビンの数値は正常だから貧血の心配はないと思うのは間違いかもしれません。

フェリチンの調べ方

血清フェリチン値は、血液検査によって調べることができます。

健康診断などの、基本的な血液検査の項目の中には含まれませんが、依頼することで調べることができます。

また、最近では、自宅で検査できるキットも販売されています。

▼費用など詳細について

さいごに

これまでにご紹介してきたように、鉄の吸収については、さまざまな体の状態によって変化します。

「鉄を効率よく吸収するためには何を食べたら良いの?」

その答えも、体の状態によって違ってくるのです。

体内に炎症はないか? 貯蔵鉄は十分にあるか? など、まずは自分の体の状態を把握することが大切です。

参考文献

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