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鉄分不足が原因で起こる代表的な貧血=鉄欠乏性貧血

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貧血は原因によって種類がわかれますが、そのなかでもダントツに多いのが「鉄欠乏性貧血」です。ここでは鉄欠乏性貧血の原因と症状、そして治療の方法をご紹介します。

「貧血」とは、血液のなかの赤血球の数や割合、ヘモグロビンの濃度が基準値よりも少なくなっている状態の事です。

つまり血液が薄い状態のことを言います。

その貧血のなかでほとんどの割合を占めるのが鉄欠乏性貧血で、「貧血=鉄欠乏性貧血」といっても、けっして言い過ぎではありません。

鉄欠乏性貧血とは?

私たちのカラダの中でエネルギーを生み出すために、ほとんどの場合で酸素が必要です。その酸素を運ぶ役割をするのが、血液の中の赤血球にあるヘモグロビンです。

ヘモグロビンは鉄とタンパク質からできています。鉄は吸収しにくい栄養素として知られますが、不足することがないように、私たちのカラダの中には鉄が蓄えられています。

  • 成人男性
    体重1キロあたり50mg
  • 成人女性
    体重1キロあたり35mg

引用:「貧血と血液の病気」浦部晶夫著 インターメディカ

このうち、食事などからカラダの中に新しく入ってくる鉄分の量と、代謝によって中から外へと出ていく鉄分の量は、それぞれ約1mgとごくわずかです。

入る量と出る量が同じなら、当然カラダの鉄の量は変わりませんが、外に出る量に対して、入ってくる量が少ないと、カラダの中にある鉄は少しずつ少なくなっていきます。

鉄分は赤血球の中のヘモグロビンをつくる材料です。そのため、鉄が足りなくなってしまうと、ヘモグロビンの量や赤血球の数が少なくなり貧血となってしまいます。

これを鉄欠乏性貧血といいます。

鉄欠乏性貧血の原因

食べ物のほかに鉄分をとる方法は、鉄剤を飲んだり、鉄分を含むサプリメントを服用したり、赤血球を輸血する場合とに限られます。

通常は食べ物の中に含まれる鉄が、おもに腸から吸収されることで、カラダの中に鉄が入ってきます。

1日3食、栄養バランスの良い食事をとることで吸収される鉄の量は約1㎎です。1日の食事の量に含まれる鉄分は10mgくらいありますが、そのうちの約10分の1くらいしか吸収されません。

鉄分が不足しやすいのは女性

カラダの中の鉄は、汗や尿・便と一緒に外へ出ていきます。その量は男性の場合約1mgです。食事から吸収される鉄分も同じ1mgですから、出入りのバランスがとれています。

それに対して女性の場合は、毎月のように月経による出血があります。鉄が外へ出ていく量が明らかに男性よりも多いです。そのため、鉄分の出入りが「出>入」の状態になりやすいです。

さらには、妊娠・出産のときに約1,000mgの鉄が失われますので、鉄欠乏性貧血は女性がほとんどの割合を占めます。

鉄が足りなくなる原因

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鉄分がたりなくなってしまう代表的な5つの原因をご紹介します。

1.月経過多

生理の出血量は、20~140mlが正常な範囲とされています。(※基礎体温計測推進研究会より)140ml以上だと「月経過多」として、病院での診察が必要です。子宮筋腫があると出血の量は多くなります。また、閉経が近くなってくると、生理の周期が不規則になって、出血の量が多くなる場合があります。

2.消化管出血

痔からの出血や、腸などからわずかな出血があった場合は、鉄が足りなくなっていきます。胃ガンや、大腸ガン、ポリープなどからの出血も同じことがいえます。男性や、閉経以降の女性の鉄欠乏性貧血は、この場合が最も多いです。

3.授乳期・小児期・成長期

授乳期や小児期、また急速に成長をする思春期は、必要とされる鉄の量がとても多いため、鉄が足りなくなってしまうことが多いです。

1日あたりに食事からとるべき鉄の所要量
  • 1歳未満
    5.0mg (男) 4.5mg (女)
  • 1~11歳
    4.5~10.5mg (男女)
  • 12~17歳
    9.5~11.5mg (男) 7.0~14.0mg (女)
  • 18~29歳
    7.0mg (男) 10.5mg (女) 
  • 30~69歳
    7.5mg (男) 10.5mg (女)※月経無6.5mg

引用:「日本人の食事摂取基準(2015年版)」

4.胃切除

胃の手術をしたあと、鉄分の吸収が悪くなって、鉄欠乏性貧血になる場合があります。鉄は胃酸によってイオン化されることで吸収されますが、胃が切除された状態などは、胃酸がでにくくなってしまうため、鉄欠乏性貧血になりやすくなってしまいます。

5.その他

特別な病気はなくても、鉄が出ていく量より、食べ物から補給する鉄分の量が少ない状態が続けば、鉄欠乏性貧血になってしまう可能性があります。ダイエット目的の食事制限などによって、食事から鉄分がとれないケースが多いです。

体の中の鉄はすぐにはなくならない

私たちのカラダの鉄分の出入りが「出>入」の状態になると、すぐに鉄分が不足してくるわけではありません。すぐにに不足しないように、鉄分には蓄えがあります。この鉄の蓄えのことを「貯蔵鉄」と言い、おもに肝臓に蓄えられています。

貯蔵鉄の量

  • 男性 1000mg
  • 女性 300mg

引用:「貧血と血液の病気」浦部晶夫著 インターメディカ

貯蔵鉄は鉄の貯金のようなもの

毎日食べるものが同じということはありません。ですから、毎日食事から得られる鉄の量も一定ではありません。そのため、日によっては、鉄が出ていく量よりも入る量が少ない日だってあります。その場合は、貯蔵鉄を使ってやりくりしています。

しかし、貯蔵鉄を切り崩すことが続いていくと、やがてその蓄え分もなくなっていき、貯金がほとんどなくなると鉄欠乏性貧血となってしまいます。

このように、鉄の出入りがマイナスに傾いている状態が続いていることを、「潜在性鉄欠乏症」といい、別の言い方では「隠れ貧血」とも言われます。鉄欠乏性貧血や隠れ貧血の人は、日本人の女性の80%以上とも言われています。

貧血の予備群である「隠れ貧血」の状態かどうかは、血液検査によって、血液中に含まれるフェリチンの数値から知ることができます。フェリチンとは、鉄を蓄えることができるたんぱく質の事です。

▼鉄欠乏性貧血の原因や隠れ貧血について詳しくは下記の記事ででご紹介しています。ぜひ、ご確認ください。

鉄欠乏性貧血の症状

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鉄欠乏性貧血の症状は以下のようなものに代表されます。

  • 顔色が悪い
  • めまいや立ちくらみ
  • 動悸がする
  • 頭痛がする
  • 疲れやすい
  • 集中力がない
  • イライラする
  • 肩こりがする
  • 爪が割れやすくなる
  • 毛髪が弱くなる
  • 爪がくぼんでスプーン爪になる
  • 食べ物が飲み込みにくくなる
  • 舌や唇が荒れて痛くなる
  • 唇の端が荒れる口角炎になる
  • 氷をガリガリ食べたくなる

これらの症状は、赤血球の中のヘモグロビンが少ない事で、酸素を運ぶチカラが低くなり、酸素が足りなくなることと、鉄分が不足することで起きます。

▼酸欠による貧血の症状はこちら

▼鉄分不足による症状はこちら

鉄欠乏性貧血の症状は、貧血の重さと無関係

血液を調べてみた結果、重度の貧血だったにも関わらず、症状をほとんど感じない人もいるそうです。

逆に、軽い貧血であるにも関わらず、立っていられないくらいキツイ思いをされている人もいます。

この違いは、貧血の進み具合にあります。急に進行した場合は症状も強く、ゆっくりと進行した場合は症状はあまり感じられません。

多くの場合、鉄欠乏性貧血は、貯蔵鉄があるおかげで、少しずつしか進行しません。そのために症状を自覚していない人が数多くいます。

鉄欠乏性貧血の治療

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食事から吸収できる鉄の量は、せいぜい1~2mgとわずかです。そのため、鉄分の貯金がなくなり、鉄欠乏性貧血になってしまうと、食事だけで鉄分を補うことは難しいです。

鉄の出入りがマイナスにならないようにすることはできても、からっぽになった貯蔵鉄を補うところまでは、なかなかいきません。

原則は鉄剤を飲むこと

鉄欠乏性貧血の治療は鉄剤を飲むことが基本です。鉄剤は主に2つのタイプがあります。

  1. 飲み薬
    (錠剤・カプセル剤・子ども用のシロップ剤など)
  2. 注射薬
    (吐き気などがありどうしても飲み薬が飲めない場合や、腸からの鉄の吸収が悪い場合、手術などで早急な貧血改善を要する時に使います。)

鉄剤は食後に飲むことが多いですが、いつ飲んでも効果は同じです。

鉄剤はお茶と飲んでも大丈夫

昔は、お茶やコーヒーに含まれる「タンニン」が、鉄の吸収を悪くするので、一緒に飲んではいけないと言われていました。

しかし、最近では鉄剤の鉄の吸収が良くなり、お茶などと一緒に飲んでも効果に変わりがないということが分かりました。

鉄剤だけで効果は十分

ビタミンCやタンパク質は鉄分の吸収を良くすることで知られます。鉄剤をのむときに、これらを含むものを同時にとれば、鉄分の吸収は良くなりますが、鉄剤だけで十分な効果がありますので、無理にいっしょにとる必要はありません。

鉄剤の副作用

  • 便が黒くなる
    これは鉄特有の色のためおこる事なので心配ありません。
  • 気分が悪くなる
    数日飲むと慣れる場合が多いです。それでも続く場合は鉄剤の種類を変えたり、胃薬をいっしょに飲みます。
  • 便秘になる
    便秘の薬を併用することで良くなります。

鉄剤は貧血が良くなっても必要

鉄剤をのむことで鉄欠乏性貧血がよくなり、血液検査で正常を判断されても、からっぽになった貯蔵鉄を補うために、さらにそこから半年ほどは鉄剤を飲み続けることが大切です。

そうしないと、せっかく貧血が良くなっても、またすぐに鉄欠乏性貧血に逆戻りしてしまいます。そして、よくなってからも、半年に1回くらいは、血液検査をして再発していないか調べることも重要です。

食事療法

鉄欠乏性貧血の治療は鉄剤が基本ですが、良くなってからは食事に気をつけることも重要です。また、鉄欠乏性貧血になる前の「隠れ貧血」の状態は、マイナスに傾いている鉄の出入りをプラスにする、もしくは、マイナスにならないようにするために、毎日の食事を見直す必要があります。

食事に含まれる鉄は、そのうち10~15%くらいしか吸収されません。また、その鉄は「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」にわかれ、それぞれに特徴があります。

▼貧血にいい食べ物について

まとめ

鉄欠乏性貧血とは、ヘモグロビンの材料である鉄が体内から不足する事で起こる、圧倒的に女性に多い貧血です。主な原因は、以下の5つです。

  1. 月経時の出血が多い
  2. 痔や腸などからの慢性的な出血
  3. 成長期などの鉄が多く必要な時期の鉄分不足
  4. 主術による胃切除
  5. 食事で鉄分がとれていない

体の中の鉄の出入りがマイナスになると、貯蔵鉄という鉄の貯金を切り崩して、血液をつくる際などに使われます。この状態を「隠れ貧血」といい、日本の女性で2人に1人はこの状態にあります。

それが続き、ついに鉄の貯金がなくなってしまうことで鉄欠乏性貧血となり、さまざまな症状があらわれます。しかし、ゆっくりと進行していくため、その症状に気づいていない人も多くいます。

鉄欠乏性貧血の治療は、飲み薬や注射タイプの鉄剤が基本です。貧血が治ってからや、予防(隠れ貧血の状態)では、食事の改善が必要です。

鉄欠乏性貧血を予防するための最大のポイントは、自分のカラダの鉄の出入りがマイナスにならないように(貯蔵鉄を切り崩していかないように)、しっかりと食事で鉄分をとる事です。

そうすることで、これまで自覚していなかった貧血の症状が改善し、「カラダが疲れにくくなった」「イライラしにくくなった」など、思わぬ効果が得られることも珍しくありません。

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