「貧血に良いとされてきたヘム鉄を含む食べ物や、サプリメントをとり続けているけど、いっこうに貧血や鉄分不足が改善しない。」という方は多いのではないでしょうか?
その原因は、食べる量が少ないことではありません。
そもそも正しい鉄分の摂り方ができていないからです。
ここでは、最新の鉄分の吸収メカニズムをご紹介いたします。
この記事を読むことで、貧血にいい食べ物に関する正しい情報が得られます。
貧血や鉄分不足の対策や予防にぜひお役立てください。
貧血・鉄分不足にはレバーじゃなく葉野菜!
鉄分の吸収率は、ヘム鉄で15~25%、非ヘム鉄は2~5%。
文献や資料によって多少の誤差がありますが、一般的に言われてきた鉄分の吸収率です。
そのため、貧血や鉄分不足にいい食べ物として、吸収率が高い方のヘム鉄をとった方がいいとされてきました。
その代表的な食べ物は「レバー」です。
しかし、「貧血にはレバー!」というのは、鉄分が体内に吸収される仕組みについては詳しく分かっていなかった昔の情報が元になったものです。
現在では、だんだんと鉄の吸収の仕組みや、血液中の鉄分がどのようにコントロールされているかが分かってきたことで、貧血や鉄分不足の改善には、「ヘム鉄ではなく非ヘム鉄をとるべき」ということが明らかになりました。
鉄欠乏時では非ヘム鉄の吸収が数倍に!
鉄欠乏時とは、言い換えるなら鉄分不足の状態のこと。
生理やケガなどによる出血や、食品からの鉄分摂取不足によって、体内の鉄分が不足し貯蔵鉄が消費され始めた状態です。
たしかにヘム鉄の方が非ヘム鉄よりも吸収率は高いのですが、鉄欠乏時(鉄分不足)では、非ヘム鉄の吸収率が格段に跳ね上がります。
非ヘム鉄の吸収率が2~5%ですが、上の表では、鉄欠乏時に鉄分の吸収率が大幅に上がっていることが分かります。
つまり、鉄分が不足している状態では非ヘム鉄の吸収率のほうがヘム鉄よりも圧倒的に高いのです。
ビタミンCや果実酸でさらに吸収UP
非ヘム鉄は、「ビタミンC」や「果実酸」を多く含む食べ物と一緒に食べることで、吸収が各段にUPします。
鉄分不足の状態で、非ヘム鉄それ自体の吸収が良くなることと合わせれば、食べ合わせによって、とても効率的に鉄分を補うことが期待できます。
▼「鉄分」、「ビタミンC」、「果実酸」がバランスよくとれるスーパーフルーツ
鉄分吸収の新たな常識
非ヘム鉄を含む食べ物の代表はパセリや小松菜といった葉野菜。
これらは水分が多く含まれるので、水分を除いた鉄含有量は、ヘム鉄が豊富と言われてきた豚レバーよりも多いくらいです。
さらに鉄欠乏時に非ヘム鉄の吸収率が上がることと合わせれば、
「貧血にいい食べ物はレバーではなく葉野菜」
ということが新たな常識となります。
鉄分を多く含む葉野菜
ぱせり 食品:7.5 (mg/100g)
固形分:49.0(mg/100g)つるな 食品:3.0
固形分:48.3小松菜 食品:2.8
固形分:47.4サラダ菜 食品:2.4
固形分:47.0ふだんそう 食品:3.6
固形分:46.2大根菜 食品:3.1
固形分:33.0すぐき菜 食品:2.6
固形分:27.4かぶ葉 食品:2.1
固形分:27.3ほうれん草 食品:2.0
固形分:27.0京菜 食品:2.1
固形分:24.4からし菜 食品:2.2
固形分:22.7なずな 食品:2.4
固形分:16.0引用:【鉄マグ欠乏症】後藤日出夫著 健康ジャーナル社
鉄分の吸収のしくみ
さて、鉄分不足の状態では、なぜ非ヘム鉄の方が吸収率が上がるのでしょうか。
そのことを理解するためには、鉄分の吸収メカニズムについて、以下のことを少しだけ理解する必要があります。
- ヘム鉄と非ヘム鉄とでは吸収経路が違う
- 非ヘム鉄は2価鉄へ還元され取り込まれる
- 最終的な吸収にはヘプシジンが必要
それでは、鉄分の吸収メカニズムを具体的に見ていきましょう。
ヘム鉄と非ヘム鉄とでは吸収経路が違う
ヘム鉄が食べ物によって体内に入ってきたら、十二指腸から空腸の間の絨毛(粘膜上皮細胞頂端部)にある、「HCP1」という専用の入口から取り込まれます。
いっぽう非ヘム鉄は「DMT1」という専用の入り口から取り込まれます。
非ヘム鉄は2価鉄へ還元され取り込まれる
しかし非ヘム鉄は、そのままではほとんど吸収されない「3価鉄」という状態です。
そのため、腸で吸収されるときには、吸収されやすい2価鉄へと還元されます。
その際の還元酵素を「Dcytb」といいます。
鉄分不足の状態では、非ヘム鉄の還元酵素であるDcytbや、専用の入り口であるDMT1がたくさん増えるので、より多くの鉄を取り込むスイッチが入るとされています。
最終的な吸収にはヘプシジンが必要
鉄分はこうして取り込まれて、3価鉄へと酸化されて貯蔵されます。
しかし、このままでは細胞内にとどまっているだけ。この後、細胞の外へと排出されないといけません。この状態が本当の意味での吸収と言えます。
その役割を担うのがフェロポーチンというたんぱく質です。
そして、このフェロポーチンの発現を調節しているのが、「ヘプシジン」という肝臓から分泌されるペプチドです。
このように、鉄分は不足していると吸収されやすくなるものの、十分に足りているときは吸収されにくくなります。それだけ大切にコントロールされているのです。
貧血・鉄分不足には非ヘム鉄~まとめ~
ここでは、鉄欠乏時(鉄分不足の状態)では、ヘム鉄よりも非ヘム鉄の方が、圧倒的に吸収率が良いという情報をお届けしました。
鉄分が十分に足りている状態であれば、動物性のヘム鉄のほうが効果的です。
鉄分が不足している方は、非ヘム鉄をとって、体内の鉄の量が上がれば(フェリチン値などが上がってきたら)、動物性の非ヘム鉄も食事に加えて鉄量を維持していく流れが理想的とも言えます。
参考文献
- 日本内科学会雑誌 104 巻 7 号
- 鉄マグ欠乏症 後藤日出夫著 健康ジャーナル社
- IRON ABSORPTION. IV. THE ABSORPTION OF HEMOGLOBIN IRON
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