テフロン加工のフライパンや鍋よりも、鉄製の鍋やフライパンの方が、体内で吸収されやすい2価鉄が溶け出すことから、貧血時の鉄分補給ができるといわれていますが本当でしょうか?
日本人女性のほとんどは鉄分不足だと言われていますから、食べ物からだけでなく、調理器具からも鉄分がとれたら嬉しいですよね。
ここでは、鉄鍋によって本当に鉄分補給が出来るのか、その効果についてご紹介させていただきます。
食品の鉄分を高める鉄鍋
貧血(鉄分補給)にひじきをおすすめしない3つの理由。でもご紹介しましたが、ひじきの鉄分は昔の約10分の1になりました。
ひじきは鉄分が豊富な食材として知られていましたが、それが鉄鍋のおかげだったということが分かりました。
その理由については諸説ありますが、調理の過程で使われる釜が鉄製のものからステンレス製のものに代わったからといわれています。
鉄の釜鍋を使っていれば、およそ10倍もの鉄分になるということですから、鉄製の調理器具は、食品の鉄分を高めるのにも役立っているということが分かったのです。
鉄鍋を使えばどれくらいの鉄分が増えるの?
じっさいに、鉄鍋を使えばどれくらいの鉄分が増えるのでしょうか?
鉄鍋に鉄鍋にコップ1杯分の蒸留水(300ml)を3分間沸騰させたあとの鉄分量を測定した実験結果があります。
鉄鍋を用いて蒸留水30 mLにより鉄溶出を行った場合、新品の鉄鍋からは 1.64µgの鉄が溶出された。
この実験では、加熱時間が長いほど、また新しい鉄鍋よりも古い鉄鍋の方が多くの鉄が溶け出したとう結果でした。
はたして、1.64µgの鉄が溶けだすという事は、どれくらいの事なのでしょうか?
1日に必要な鉄の量
私たちの体内では、毎日1~1.5mgの鉄が失われています。仮に、鉄鍋から溶け出した鉄分の吸収率が100%だったとしても、1.64μg(マイクログラム)とは、0.00164mgの事です。
1日に600杯以上のお湯を飲まなくてはいけないことになります。
したがって、鉄鍋から溶け出す鉄分は、貧血対策などの鉄分補給として効果は無い…となるのですが、条件付きで「効果がある」に変わります。
酸性になると鉄は多く溶ける
調理の際に「酢」を加えるなどして、酸性にすることで、鉄はイオン化されて溶出量が増加します。1000倍以上増加したという報告もあるほどです。
これなら、仮に吸収率が半分(50%)だったとしても、1日に必要な鉄量を1杯のお湯で十分に摂れる計算になるわけです。
鉄分の吸収率について
鉄分の吸収率50%という数値は、鉄分不足の状態での、非ヘム鉄の吸収率としては決して低くはありません。
このことについては「貧血・鉄分不足にいい食べ物はレバーじゃなかった!」で詳しくご紹介していますので、ぜひご確認ください。
鉄鍋を効果的に使う方法
鉄鍋を使って調理するときは、中性やアルカリ性のままではほとんど鉄分の溶出に期待はできません。
しかし、酢などを加えて内容物を酸性にすれば、鉄分の溶出量を高める事が可能できます。
その他、ケチャップや食塩も、その効果があると言われています。
鉄の溶出量は添加調味料に影響され、食酢、トマトケチャップ、食塩の順に多く、特に食酢添加における鉄溶出量は顕著に増加した。
さいごに
このように、鉄鍋の鉄が材料に移行するかどうかは、調理する際の溶液に左右されます。
鉄分をイオン化するために十分な酸性度があり、さらに過熱時間が長いほど、鉄分が溶け出す量は増えると考えられています。
しかし、鉄分が体内に吸収されるかどうかは、食べ物に含まれる鉄分の多さだけによるものではありません。
鉄分は、ヘプシジンが産生されてフェロポーチンが減少するまでの間しか取り込まれないからです。
▼体内の鉄調節における「ヘプシジン」の役割について
鉄鍋を使った料理に、お酢などをたくさん加えたからといって必ず鉄分の吸収量が増えるわけではありませんのでご注意ください。
参考文献
- 「使用年数の異なる鉄鍋を用いた調理中の鉄溶出量と鉄鍋表面の金属元素の化学状態」 Trace Nutrients Research 30 : 17−20(2013)
- 「調理中に鉄鍋から溶出する鉄量の変化」 日本調理科学会誌Vo1.36No.1(2003)
- 「女性の9割が鉄マグ欠乏症」後藤日出夫著 健康ジャーナル社
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