赤血球が壊れてしまうことで起こる溶血性貧血は、生まれつきのものと、そうでないものとに分類されます。ここでは、それぞれの原因と治療の内容についてご紹介いたします。
溶血性貧血とは、血液中の赤血球が寿命をむかえる前に壊されてしまうことで起こる貧血です。
私たちの血液には寿命があるということはご存知でしたか?
「血が死ぬってどういうことなの?」
そう思ったりしたかもしれません。
溶血性貧血の症状や原因、治療について知るために、まずは血液の寿命について見ていきましょう。
血液の寿命とは血液細胞の寿命のこと
ここで言う血液の寿命という言葉を正確に表現すれば、血液細胞(血球)の寿命という事になります。
私たちのカラダを流れる血液は、血漿と呼ばれる液体と、血液細胞(血球)とで構成されています。
血液細胞(血球)は次の3つのことを言います。
- 赤血球
- 白血球
- 血小板
この中で最も寿命がはっきりしているのは赤血球で、約120日です。白血球はその種類によってそれぞれ異なり、数時間のものから、数年のものまであります。血小板の寿命は約10日ほどと言われています。
寿命の前に壊れる事で溶血は起こる
赤血球は骨髄でつくられて、血液に入ってから全身を回り酸素を運んだりしています。老化して寿命を迎えた(約120日)赤血球は処理されて、その中にある鉄は、またつくられる時に再利用されます。
赤血球が通常の寿命を迎える前に壊され、血清・血漿といった液体部分に出ることを「溶血」と言います。そして、溶血によって貧血がおこることを「溶血性貧血」といいます。
血をつくる機能には余力がある
骨髄での血をつくる能力には余力があって、多少、赤血球の寿命が短くなったとしても、その分くらいは余計につくることができます。そのため、それくらいでは貧血になりません。
しかし、赤血球の寿命がかなり短くなってしまうと、生産が追い付かずに赤血球が少なくなってしまいます。
溶血性貧血の症状
溶血性貧血の症状は、「一般的な貧血の症状」+「溶血による症状」です。
貧血は、その原因によってさまざまな種類があります。
- 溶血性貧血は赤血球が壊されること(溶血)
- 鉄欠乏性貧血は鉄分が不足する事
- 巨赤芽球性貧血は葉酸やビタミンB12が不足する事
どの貧血にも言えることですが、貧血の症状には、ある共通した症状に加え、それぞれの原因ごとに特有の症状があります。
溶血性貧血の原因は溶血ですから、特有の症状とは、溶血による症状ということになります。
貧血に共通する症状は酸素不足
貧血とは、何らかのことを理由に、赤血球が少なくなっている状態の事です。ですから、どの種類の貧血においても、赤血球が少なくなることで起こる症状があります。
それは何か?ということは、赤血球の役割は何か?という事を知ればわかります。
赤血球の主な役割は酸素の運搬です。赤血球が少なくなれば、酸素を運搬する能力が低下しますから、カラダが酸欠状態となり、さまざまな症状があらわれます。
つまり、一般的な貧血の症状とは、酸欠による症状の事です。
一般的な貧血の、おもな症状
- 動悸や息切れがする
- 頭痛
- めまい
- カラダがだるい
- 疲れやすい
- 疲れがとれない
- 肩こり
- 首のこり
- 肌がカサカサになる
- 髪が抜けやすくなる
溶血による症状
溶血によって起きる症状。それは「黄疸」です。
黄疸とは、カラダの中で「ビリルビン」という黄色い色素が異常に増え、眼球や皮膚などが黄色く染まった状態です。
眼球や皮膚以外にも、ビリルビンが尿に排泄され、尿が濃くなります。
ビリルビンが増える理由
ビリルビンは、壊された赤血球のヘモグロビンから生じます。健康な状態では、ビリルビンは再びヘモグロビンとなって赤血球に利用されるという循環を行っています。しかし、溶血性貧血ではたくさんの赤血球がこわされますから、その分、たくさんのビリルビンが増えてしまいます。その結果、黄疸が生じます。
溶血性貧血の原因
溶血性貧血の原因には、赤血球それ自体に何らかの異常がある場合と、赤血球にかかわる環境に異常がある場合との2つがあります。
赤血球に異常がある場合は、先天性のものが多く、環境に異常がある場合は後天性のものです。
- 先天性
先天性とは、通常は生物の特定の性質が「生まれたときに備わっていること」「生まれつきにそうであること」という意味で用いられる。
引用:「ウィキペディア」
- 後天性
後天性とは生まれた時は通常ではあったものの、人間生活を送っている途中に事故や環境など様々な事柄を原因として持つこととなってしまった病気や障害の性質。
引用:「ウィキペディア」
先天性の赤血球の異常
先天性の赤血球の異常としては、赤血球を覆っている膜に異常がある場合や、赤血球の中にある酵素が欠乏しているものなどがあります。
膜に異常がある病気で代表的なものに「遺伝性球状赤血球症」というものがあります。
遺伝性球状赤血球症について詳しく
正常な赤血球の形は、中央がくぼんだ円盤にようになっています。遺伝性球状赤血球症のある人の赤血球は、やや球状の形をしています。球状の赤血球は、毛細血管などの補足狭いところを通ったときに壊れやすいため溶血をおこします。
その他の先天性の赤血球の異常
その他、先天性の溶血性貧血には以下のような酵素欠乏症があります。
- G6PD欠乏症
- PK欠乏症
※G6PDとは、グルコース6リン酸脱水素酵素という酵素です。
※PKとは、ピルビン酸キナーゼという酵素です。
後天性の赤血球の異常
赤血球をとりまく環境の異常は、おもに後天性である場合がほとんどです。異常をきたす閑居の代表的な例をご紹介します。
自己免疫性溶血性貧血
突然発症することが多い病気です。免疫の異常によって、赤血球に対する抗体ができてしまい、赤血球を攻撃して壊してしまいます。
悪性リンパ腫などの病気にともなって現れる場合があります。
発作性夜間血色素尿症
寝ている間に赤血球がこわれてしまい、朝おきたときの尿がコーラのような色になってしまいます。赤血球や白血球の膜の異常が、後天的に現れることで赤血球が壊れやすくなってしまいます。
その他の後天性の溶血性貧血
そのほかに、スポーツなどで足の裏に強い衝撃が加わったり、心臓の手術や、血液の凝固異常など、血液の流れに乱れが生じることが原因となって赤血球が壊される場合があります。
- 行軍血色素尿症
- 赤血球破砕症候群 など
溶血性貧血の治療
先天性と後天性の原因による、それぞれの場合の治療についてご紹介します。
先天性による原因の場合の治療
先天性の溶血性貧血の場合、酵素欠乏による溶血性貧血には治療方法がありません。
赤血球の膜に異常がある遺伝性球状赤血球症では、脾臓(ひぞう)で赤血球を壊すことが多いため、脾臓の摘出手術をおこなうことで、症状が改善されるようです。
後天性による原因の場合の治療
後天性の自己免疫性溶血性貧血出の治療では、免疫を抑えることを目的として、ステロイドホルモンをが使われます。
多くの場合、その飲み薬を使用することで症状は改善するようです。しかし、症状が改善してからも、再発する可能性がありますので、経過をよく観察することが大切です。
まとめ
私たちの血液は、血漿と呼ばれる黄色い液体と、赤血球や白血球、血小板といった血液細胞で構成されています。
その血液細胞にはそれぞれ寿命があり、赤血球は120日ほどで壊されます。
血液細胞が壊され血漿などに出ることを「溶血」といい、120日よりも早くこわされ、赤血球の産生が追い付かなることで起きる貧血を「溶血性貧血」と言います。
溶血性貧血は、一般的な貧血の症状に加えて、黄疸がでるこがあります。
原因は先天性のものと後天性のものとにわかれ、先天性は、赤血球それ自体(赤血球の膜や、赤血球の中にある酵素)に原因がある場合が多く、代表的な病気に「遺伝性球状赤血球症」というものがあります。
酵素欠乏が原因の場合は、その治療方法はありませんが、膜に異常がある遺伝性球状赤血球症では、脾臓を摘出することで症状は改善します。
後天性の原因では、赤血球をとりまく環境に異常がある場合がほとんどで、代表的なものに、免疫の異常によって、赤血球に対する抗体ができてしまい、赤血球を攻撃して壊してしまう、自己免疫性溶血性貧血というものがあります。
この場合の治療は、ステロイドホルモンの飲み薬を使用します。
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