貧血の大半を占める鉄欠乏性貧血。その予防方法は「鉄分が豊富な食べ物をたくさん食べること!」そう思っているあなたは、大切なことを見落としてしまっている可能性があります。
鉄欠乏性貧血を予防するうえで大切なことは、まず「把握」です。
鉄分不足の度合いを正確に把握することこそ、貧血予防の第一歩だといえます。
一般的な血液検査では、ヘモグロビンの数値が基準値より低いと貧血を疑われますが、その時はもうすでに最終段階です。
鉄分不足の初期段階ではヘモグロビンの数値はOKですから、貧血とは診断されません。
しかし鉄分不足が原因で、イライラ・頭痛・めまいなどさまざまな症状がある場合、貧血ではないと言われていたらどうしますか?
的外れな診察をする可能性
「頭痛がひどいから脳外科で診てもらおう」
「精神的に不安定(イライラやうつ症状など)だから、心療内科へ行こう」
「腰痛・手のしびれなどがあるから整形外科へ」
「めまい・耳鳴りがあるから耳鼻科へ」
などなど、原因が鉄分不足なのにもかかわらず、まったく的外れな診察を受けているかもしれません。
受診先が貧血を疑って、詳しい血液検査をしてくれれば良いですが…
レントゲンやMRIなど、さまざまな検査をした結果「異常なし!」という結果であれば、何か精神的な問題なのかと疑い、気分は落ちこむばかり… 症状がさらに悪化するかもしれません。
貧血予防のために大切なこと
貧血の予防のために大切な事はたった一つです。
それは、自分が鉄分不足である事を早めに認識し、鉄の借金状態から早く抜け出すという事です。
鉄の借金と聞いてもピンとこられない方は、鉄欠乏性貧血がどのように進行していくのかご理解されていない可能性がありますので、かんたんにご紹介いたします。
鉄欠乏性貧血のすすみかた
私たちが健康に生きていくうえで欠かすことはできない鉄分。鉄分不足が起こりにくいよう、私たちの体内には鉄のストックがあります。
このストックしている鉄のことを貯蔵鉄といいます。
鉄の貯金が減っていく・・
鉄はとっても吸収されにくいことで知られ、日本人女性のほとんどは鉄分不足だと言われています。そのため、女性の多くは、毎日鉄の貯金(貯蔵鉄)をきりくずし続けているのです。
貯金が底をつき借金するハメに・・
やがて鉄の貯金も底をつきます。貯金がなくなっても鉄が必要なことは変わらないため、今度は血清鉄という輸送中の鉄から借金をします。
ついにヘモグロビンから借りる
血清鉄にも貸せる鉄に限界があるため、ついには血液中のヘモグロビンから借りないといけなくなってしまいます。
ここで初めて、ヘモグロビンの濃度が下がるため、血液検査でも貧血が疑われ、自分が鉄分不足だと気づくわけです。
▼こちらの記事では、貧血の進行を図解入りで分かりやすくご紹介しています。
大切なのはヘモグロビンよりフェリチン?
ご紹介してきたように、ヘモグロビンの数値が基準値を下回り、貧血と診断されたときは、貯蔵鉄が空っぽの状態です。
日本人女性のほとんどは、鉄の貯金を毎日切り崩していて、貧血への道を突き進んでいます。
実際のお金であれば、自分の貯金残高がどれくらいかは把握しているでしょう。しかし鉄の貯金残高はどうでしょうか?
日本人女性のほとんどは鉄分不足だと言われています。であれば、あなたの貯蔵鉄も、どんどん失われているかもしれません。
大切なのは、まず把握すること! 貯蔵鉄は血液中のフェリチンというたんぱく質の数値を調べることで分かります。
早めに手を打てば改善もかんたん!
くり返しますが、一般の血液検査では鉄分不足かどうかの検査まではされません。そのため、貧血を疑われて初めて、自分が鉄分不足だと気づくケースがほとんどです。
しかしその時には、血清鉄も枯れ、貯蔵鉄も空っぽ。その分をすべて補っていくには時間がかかります。これが早めに気づけたらどうでしょうか?
貧血を疑われて改善に取り組むよりも、はるかに簡単だと容易に想像ができます。
早期発見、早期解決が大切なのはどの病気にも共通して言えることですね。
鉄分不足を確認する方法
鉄分不足かどうかは、血液検査によってフェリチン値を調べると分かります。
基準値は男性:21~282 ng/ml、女性:5~157 ng/mlとされていますが、この数値は下限が低いとされ、病院によっては、80以下を鉄分不足、30以下では重度の鉄分不足と判断されているようです。
ちなみにアメリカでは、フェリチン値100以下は鉄分不足とみなされ、40以下の女性は出産を許可されないそうです。
自宅でフェリチンをしらべる
血液検査は基本的に病院で行うものですが、貧血検査において必ずフェリチン値を検査してくれる病院は多くありません。こちらから希望しないと検査してくれないケースもあり、なかには保険の適用外となることもあるようです。
根気よく保険が適用できる病院を探すことも大切ですが、簡易キットを使って自宅で検査を行うこともできます。
生活習慣病+フェリチンセルフチェック
富士フイルムが製造している「生活習慣病+フェリチンセルフチェック」は、生活習慣病に関わる14項目とフェリチンの値を調べることができる血液検査キットです。
【商品名】
デメカル 生活習慣病+フェリチンセルフチェック
【価格】
・Amazonをチェック
・楽天市場をチェック
【検査の流れ】
1.キットが届く
2.指先から少量の血液をとる
3.検体・検査申込用紙・質問票とともに返送
4.3~4日で速報メールが届く※メールアドレス記載者のみ
5.7~10日後で検査結果が届く
病院で検査をしてもらう
保険が適用されれば、病院によって幅がありますが、2,000円台~5,000円台での検査ができるようです。しかし、適用されなければ全額負担となるので、前もって電話で確認した方がいいと思います。
ご紹介した自宅でできる検査キットは、厚生労働省から医療機器認可を取得し、医療機関でも活用されているもののようですが、レビューの中には、実際に病院で測った結果と違いがあったという意見がありました。
やはり1番安心なのは病院で検査をしてもらう事なのかもしれませんから、フェリチンを保険適用で調べてくれる医療機関を探すことが1番なのかもしれません。
フェリチンが高ければ安心?
フェリチンの値が高ければ100%貧血の可能性がないかというと、そうではありません。
ある条件ではフェリチンは実際の値より高く出てしまうことがあるようです。その条件とは、下記のような炎症や感染症が起こっている場合です。
- 肝炎
- 脂肪肝
- 肝硬変
- 膵炎
- 心筋梗塞
- 感染症
フェリチン値は、鉄分不足を測るための大きな指標ではありますが、基準値内=安心と勝手に判断できるものではないようです。また、基準値よりも高い数値がある場合も炎症や感染症が疑われます。
いずれにせよ、最終的な診断については、1つの検査項目だけでなく、複数の項目から総合的な判断が必要とされるようですから、医療機関でしっかりと検査してもらうことをおすすめします。
鉄の借金から抜け出す方法
鉄欠乏性貧血や、重度の鉄分不足と診断された場合、一般的な治療方法は鉄剤の経口投与です。
しかし、仮に治療によってヘモグロビンやフェリチンの数値が改善したとしても、あなたが鉄の借金体質であるかぎり、本質的な改善とはなりません。
つまり、鉄を借りなければならない状況をなくさないといけないという事になりますが、その方法はいたってシンプル。鉄分は食事からしか摂取できませんから、日々の食事を見直すということになります。
鉄分を効率よく摂るポイント
鉄分不足を解消する方法、つまりフェリチンを増やす方法は、鉄分を効率よく吸収できる食事にすることです。ただやみくもに鉄分の多い食べ物をたくさん食べ続けていく事ではありません。
そのためには、どうすれば効率よく鉄分が吸収できるかを知る必要がありますが、下記の2つのポイントが大事になっていきます。
- 吸収されやすい鉄を含んだ物を食べること
- 吸収を助ける食べ物と阻害する物を知る
このポイントをおさえた食事とはどのような食事なのかをご紹介します。
吸収されやすい鉄
鉄には、肉や魚など動物性の食品に含まれる「ヘム鉄」と、野菜や果物や海藻など植物性の食品に含まれる「非ヘム鉄」があり、それぞれに吸収率が違います。
鉄分の吸収率は、鉄分不足の度合いや、その食べ物によっても差があるため一概には言えませんが、一般的にヘム鉄の吸収率は10~20%、非ヘム鉄では2~5%と言われています。
例えば、干しブドウやプルーンなどといった鉄分が多いとされるものであっても、含まれるのは非ヘム鉄ですから、レバーや貝類のヘム鉄と比較すると、吸収率では劣っています。
吸収を助ける食べ物・阻害する食べ物
吸収率の低い非ヘム鉄ですが、他の栄養素の影響を受けやすいという性質から、たんぱく質・ビタミンC・ビタミンBなどといった栄養素と同時に摂取することで、吸収は格段に良くなります。
非ヘム鉄よりも、ヘム鉄の方が吸収率は良いですが、動物性の食べ物だけに偏ってしまう事も問題です。だから、非ヘム鉄の吸収率を上げる食べ合わせを工夫するということは、とても大切な事なんです。
▼自然な食べ物で鉄分を摂る方法
また、ほかの栄養素の影響を受けやすいという事は、吸収が良くなることだけでなく、逆に吸収を阻害されることだってあります。
タンニン・カフェイン・シュウ酸などを含む、コーヒー・緑茶・紅茶などは、鉄分の吸収を阻害する働きがありますので、食事時間とずらして飲むなどの工夫が大切です。
▼下記の記事では、より具体的な内容を詳しくご紹介していますので、ぜひご確認ください。
貧血の予防で大切な事~まとめ~
貧血を予防する上で大切なたった一つの事とは
自分が鉄分不足である事を早めに認識し、鉄の借金状態から早く抜け出すという事。
鉄分不足かどうかを認識するためには、血液検査でフェリチン値を検査してもらいましょう。また、鉄の借金状態を改善するためには、食事の見直しが欠かせません。
鉄分は、とても吸収しにくく不足しがちな栄養素。鉄分を効率よく摂る方法を理解し、積極的に実践していくことが大切です。
この記事が気に入ったら
いいね!しよう