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多くは原因不明!「再生不良性貧血」の症状や治療の方法

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再生不良性貧血とは、骨髄のはたらきが悪くなり、血が作られなくなってしまう病気です。症状が重たくなってしまう事が多く、厚生省の定める難病にも指定されています。

  • 再生不良性貧血とは?
  • どれくらいの人がかかる?
  • どんな症状があるの?
  • 原因は?
  • 治療方法は?

これらの事を説明している文献などは多くありますが、医学的な内容について書かれたものが小難しく感じてしまうのはあなただけではありません。

ここでは、できるかぎり分かりやすく、専門用語の解説も含めて、再生不良性貧血の症状や原因、治療についての情報をご紹介します。

再生不良性貧血とは?

not_madeはじめに、「再生不良性貧血とは、骨髄のはたらきが悪くなり、血が作られなくなってしまう病気です。」とご紹介しました。

このサイトのさまざまな記事で、貧血の原因は大きく3つあるとご紹介しています。

  1. 赤血球の材料が足りない
  2. 血液をつくる造血幹細胞が少ない
  3. 造血の過程に異常がある

※造血とは、赤血球などの血液細胞が作られること

再生不良性貧血は、「2.骨髄の造血幹細胞が少ない」ことが原因です。

貧血で最も多くみられる原因は、「1.赤血球の材料が足りない」です。

一般的な貧血の症状と言えば、

  • 材料である栄養素(鉄分・葉酸・ビタミンB12)不足によるもの
  • 赤血球そのものが少なくなり酸素が不足すること

このように、赤血球に関係していることがほとんどですが、再生不良性貧血の場合、赤血球だけではなく、血液そのものが作られなくなりますので、一般的な貧血の症状に加え、白血球、血小板といった血液細胞も少なくなります。そのため症状も重たくなることが多いです。

  • 難病指定を受けている事
  • 原因が明確になっていない
  • 血液自体がつくられなくなること

これらの理由から、同じ貧血という名前はついていますが、明らかに他の貧血とは毛色が違います。

再生不良性貧血の割合

難病情報センターの情報によると、60~70歳の高齢者に発症することが多いですが、10代の層にもピークがあり、全年齢層に見られるそうです。

その他、男女比に大きな違いもなく、若干女性に多いという割合です。

年齢や性別によって、再生不良性貧血になりやすいか、そうでないかの違いはあまりなさそうです。

また、臨床調査個人票という、難病のために医療費の助成を受けるための認定や、認定後の更新に必要な書類をもとにした調査によると、再生不良性貧血と診断された人の数は、1年間に約1000人とされています。

再生不良性貧血の症状

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再生不良性貧血とは、骨髄に何らかの影響があり、その中にある造血幹細胞が少なくなることで、血液がつくられなくなってしまう病気です。

造血幹細胞が少ないと血が作られないワケ

血液とは、血漿(けっしょう)と呼ばれる黄色い液体と、赤血球や白血球などの血液細胞からできています。

造血幹細胞とは、骨髄の中にある幹細胞で、赤血球や白血球、血小板などの血球系の細胞を生み出します。

幹細胞というのは、1つの細胞が分裂した結果、2種類以上の細胞に分化ができることと、その幹細胞自体にも分裂が可能な、細胞のことです。

分化(ぶんか)とは、本来は単一、あるいは同一であったものが、複雑化したり、異質化したりしていくさまを指す。生物学の範囲では、様々な階層において使われる。特に細胞の分化は発生学や遺伝学において重要な概念である。

引用:「ウィキペディア」

このように、造血幹細胞は、私たちのカラダのなかで必要に応じてその形を変え、絶えず生み出されています。

血液の細胞は赤血球だけではありませんから、再生不良性貧血になると、赤血球、白血球、血小板といった、全ての血液細胞の数が少なくなってしまいます。

赤血球が減ることで起こる症状

(※一般的な貧血の症状)

  • 動悸
  • めまい
  • 立ちくらみ
  • 頭痛 など

白血球が減ることで起こる症状

  • 肺炎などの感染症にかかりやすくなる
  • さまざまな病気への抵抗力が弱まる

血小板が減る事で起こる症状

  • ぶつけた記憶がないのに青あざができる
  • 歯茎から出血しやすい
  • 鼻血がでやすい
  • 月経による出血が止まらない

再生不良性貧血の原因

再生不良性貧血には、生まれつきに起こる場合とそうでない場合があります。

生まれつきに起こることを「先天性」といいますが、先天性の再生不良性貧血はごくまれだそうです。その多くは、350,000人に1人の割合で生じるファンコーニ貧血という特殊な病気です。

生まれつき以外で起こるものを「後天性再生不良性貧血」といいます。ほとんどは後天性のもので、生まれつきに起こるものではありません。

後天性再生不良性貧血の原因はおもに次の4つです。

  1. 薬が原因のなっている場合
  2. 肝炎に引き続いて起こるもの
  3. 妊娠に伴うもの
  4. 特発性(原因不明)

このうち「4.特発性」が原因の約9割を占めるそうです。次に、4つそれぞれの詳細についてご紹介します。

1.再生不良性貧血の原因となりえる薬

再生不良性貧血の原因となる可能性のある薬をご紹介します。

  • 経口糖尿病薬
  • 抗てんかん薬
  • 鎮痛解熱薬

これらの薬を使用した後に発症した例があることで知られています。

2.肝炎後に発症するケースとは?

B型・C型肝炎などのウイルス性肝炎にかかって、急性期を過ぎて回復したころに再生不良性貧血にかかる事があるそうです。

3.妊娠に伴う再生不良性貧血

妊娠にともなって再生不良性貧血になることは稀ですが、原因不明の再生不良性貧血の女性が妊娠した場合に、病気が悪くなることが多いようです。

4.特発性(原因不明)

最も多い原因不明のものは特発性と呼ばれますが、さまざまな研究結果から、骨髄の中のリンパ球に異常が生じて造血幹細胞を傷害することがこの病気の本態であると考えられるようになりました。要するに、免疫の異常が関係していると考えられています。

リンパ球による免疫の以上を抑えるために、免疫抑制療法を実施すると効果が見られることも、再生不良性貧血に免疫の異常が関係していることを示しています。

全ての原因に対しての対応

特発性(原因不明)のものだけでなく、薬剤性や肝炎のあとの再生不良性貧血にも、免疫抑制療法が有効です。再生不良性貧血では、先天性のものを除くと、ほとんどの病型が、免疫の異常によるものだと考えられるようになりました。

再生不良性貧血の5段階の重症度

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再生不良性貧血は重症度によって5段階に分けられています。下記の表にある数値について解説します。症状が軽い場合は、白血球の低下はなく、赤血球と血小板のみ少なくなっている場合があります。

  • 網赤血球
    赤血球の1つ手前の若い赤血球の数の数値です。赤血球の量が少なくなった場合、正常に血液がつくられていれば、網赤血球は増加します。しかし、貧血でかつ、網赤血球の数値が低い場合には、再生不良性貧血が疑われます。
  • 好中球
    好中球とは、5種類ある白血球(好中球、好酸球、好塩基球、単球、リンパ球)のうちの一つで白血球の中に最も多く含まれています。他の血球成分の減少と合わせて再生不良性貧血を疑う目安となります。。
  • 血小板
    血小板の数です。この数値が高い時は、貧血や多血症などを疑い、逆に低い場合は、白血病や肝硬変など、さまざまな病気が疑われます。
ステージ
1
軽症 下記以外
ステージ
2
中等症 以下2項目を満たす
網赤血球 60,000/μl未満
好中球 1,000/μl未満
血小板 50,000/μl未満
ステージ
3
やや
重症
以下2項目を満たし
定期的な赤血球輸血が必要網赤血球 60,000/μl未満
好中球 1,000/μl未満
血小板 50,000/μl未満
ステージ
4
重症 以下2項目を満たす
網赤血球 20,000/μl未満
好中球 500/μl未満
血小板 20,000/μl未満
ステージ
5
最重症 好中球 200/μl未満
かつ下記の1項目以上
網赤血球 20,000/μl未満
血小板 20,000/μl未満

引用:「日本造血細胞移植学会ガイドライン再生不良性貧血(成人)」

再生不良性貧血の治療

再生不良性貧血のおもな治療方法は、骨髄移植と免疫抑制療法です。

軽症の場合では、蛋白同化ホルモン剤の投与が試みられることが多く、ときには治療を行わずに経過観察する場合もあります。

重症になってくると、輸血が必要になってくる場合もあります。輸血は、通常は赤血球濃厚液が投与されます。その時の目安は、ヘモグロビン濃度が7.0を下回らないようにするのが通常の目安となります。しかし、高齢者の場合は、息切れなどの貧血症状が若い人よりも出やすいので、ヘモグロビン濃度をもう少し高く保つように、多めに輸血する事があります。

重症、最重症で、年齢40歳未満、兄弟姉妹に抗原が合致した骨髄提供者がいる場合は、骨髄移植をおこないます。骨髄移植が適応にならない場合は、免疫抑制療法が行われます。

鼻からの出血や口の中からの出血が続く場合は、血小板輸血がおこなわれます。この輸血を頻繁におこなうと、血小板に対する抗体ができてしまい、輸血をしても血小板の数値があがらなくなってしまうので、必要なときだけ実施されるそうです。

まとめ

再生不良性貧血とは、何らかの原因によって骨髄のはたらきが悪くなり、造血幹細胞が少なくなることで血が作られなくなってしまう病気です。

何らかの原因とは、先天性(生まれつき)によるものと、後天性のものとに分かれますが、先天性の再生不良性貧血はごくまれだそうです。

後天性再生不良性貧血の原因はおもに次の4つです。

  • 薬が原因のなっている場合
  • 肝炎に引き続いて起こるもの
  • 妊娠に伴うもの
  • 特発性(原因不明)

このうち「4.特発性」が原因の約9割を占めるそうです。

つまり、再生不良性貧血のほとんどは、原因がはっきりとしていません。そのため、厚生労働省の難病指定を受けています。

他の貧血に比べ、症状が重たくなってしまうことが多い病気です。

この病気は、進行の度合いによってステージ1~5までにわかれ、おもな治療方法は骨髄移植と免疫抑制療法です。また、状況によっては輸血を行う場合もあります。

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