貧血によるめまいや立ちくらみ。体のダルさなど、家事や仕事などへの影響はとても大きく、本当につらいですね。そもそもなぜ貧血になるのでしょうか?ここではそのメカニズムについてご紹介しています。
貧血のメカニズムは1つではありません。何通りかのメカニズムがあり、それぞれに違った種類の貧血があります。むずかしそうにも聞こえますが、貧血のメカニズムは、血液の役割とサイクルを少しだけ知ることで、かんたんに理解することができます。
「どうして貧血になってしまうの?」という疑問が、スッキリ解消される内容ですので、 ぜひお役立てください。では、メカニズムを知るために、まずはかんたんに血液の働きについて見てみましょう。
血液の役割は運搬と回収
貧血のメカニズムと大きな関係がある血液の役割は、おもに次の2つです。
- 全身の細胞に酸素や栄養素を運ぶ
- 細胞からでたゴミ(二酸化炭素や老廃物)を回収する
動物も人間も、生きていくためには酸素や栄養が必要ですね。食事によってとりいれられた栄養を燃やすために酸素は必要です。私たちは、栄養が燃えたときに出るエネルギーによって生きています。
生きていくために必要な栄養や酸素。これらを全身の細胞に運び届け、燃えたときに出たゴミ(二酸化炭素や老廃物)を回収し、外に出すための器官(腎臓や肺など)に送り届けることが、血液のお仕事のひとつです。
その血液は、大きく2つからできています。
1.「けっしょう」と呼ばれる液体の成分
血液の約55%をしめる液体の成分です。その約7%がたんぱく質、その他、糖質・脂質・ビタミン・酵素・ホルモンなどからできています。毛細血管を介して体液と循環する事で、全身の細胞に栄養やホルモンを運ぶ一方で、老廃物を回収してくれます。
2.「けっきゅう」といわれる形のある成分
「けっきゅう」とは、赤血球、白血球、血小板などの事を言います。血液の約45%をしめます。その中で最も数が多いのが赤血球で、その大部分を占めるのがヘモグロビンです。
このヘモグロビンが、全身に酸素を運んでくれています。
ヘモグロビンは、鉄を含むヘム(鉄を含むポルフィリン体)という色素と、グロビンというタンパク質からできていて。酸素は、この鉄の部分に結びつくことで運ばれています。
※ヘモグロビンが「鉄」と「タンパク質」でできているということは、貧血のメカニズムを知るうえでとても大切な部分です。詳しくは下記の記事でご確認ください。
赤血球は酸素を運ぶための車
酸素を人間に例えるなら、その運び役は車。この車が赤血球です。ヘモグロビンはその車の中にある人間(酸素)をのせるための椅子です。
この車(赤血球)は、人間(酸素)を乗せて、血管という道路を通り、さまざまな目的地(カラダの各組織)にむかっています。
貧血とは、血液中のヘモグロビン濃度が少なくなっていること。つまり、車の椅子の数がすくない状態です。これでは目的地(各組織)に到着する人間(酸素)がすくなくなるので、酸素不足によるさまざまな症状が起こるわけです。
最後に、この赤血球(車)がどこで作られ、いつどのように失われるかを知れば、何通りかある貧血のメカニズムもかんたんに分かるようになります。
貧血のメカニズムと赤血球の寿命
赤血球がどこで作られて、いつ、なぜ失われるかを、できるだけわかりやすくご紹介します。では、赤血球がつくられて失われるまでを見ていきましょう。
赤血球がつくられる場所
赤血球をつくっている工場は、骨のまん中にある骨髄と言われるところです。この工場では、毎日赤血球をつくっています。
しかし、なぜ毎日つくる必要があるのでしょう?
それは、毎日ある決まった割合で失われているからなんです。
赤血球は120日でこわされる
赤血球は、全身に酸素を運び、二酸化炭素を回収しながら回りつづけ、120日ほどで胃のうしろにある「ひぞう」というところでこわされます。
こわされた赤血球は、全てがゴミとなって、カラダの外にだされるわけではありません。こわされて分解された鉄の一部は、もう一度ヘモグロビンがつくられるときに使われます。
ヘモグロビンをつくる工場である骨髄では、その再利用された鉄と、食べ物からとり蓄えられている鉄(貯蔵鉄)を使い、毎日新しい赤血球をつくります。
血液の寿命や造血について詳しくは下記の記事をご参照ください。
これをくりかえしていますが、このサイクルのどこかに問題があると、赤血球がいつも通りにつくられなくなります。その問題ごとに、それぞれのメカニズムがあり、ひとつひとつに違った貧血の名前がついています。
貧血のメカニズムごとに種類があります。
貧血とは、「全身に酸素を運ぶヘモグロビンが少なくなっている状態」の事を言います。ですから、診断するときには、おもに血液の検査によって、ヘモグロビンの量をはかります。
ヘモグロビンが少なくなる理由ごとに、貧血には種類があります。つまり、ヘモグロビンが少なくなるメカニズムごとに、種類があるということです。
そのメカニズムは、ここまでお読みいただいていれば、理解することはかんたんです。もう一度、内容を整理してみましょう。
- 血液の中のヘモグロビンが全身に酸素を運ぶ
- ヘモグロビンは鉄とタンパク質からできている
- ヘモグロビンは赤血球の大部分を占めている
- 赤血球は骨髄で毎日つくられる
- つくられた赤血球は120日で破壊される
このように、つくられた赤血球は120日で失われ、不足しないよう毎日作られています。このサイクルの問題があったとき、その問題のメカニズムによって貧血の種類がわかれます。
1. 「鉄欠乏性貧血」
赤血球をつくるときに問題があり起こります。
最も多い貧血で、全体の60~80%を占めます。赤血球をつくるときの材料である鉄が足らなくなることがおもな原因です。鉄は赤血球の中心となる成分であるため、不足するとヘモグロビンがうまく作れません。
特に女性のは、月経や妊娠などによって鉄が大量に必要ですから、鉄欠乏性貧血がとても多いです。また、ダイエットなどによる鉄の足りない食事の習慣も大きな理由のひとつです。
1-1. 鉄分不足のメカニズム
ヘモグロビンをつくるための鉄は、その2/3が血液の中にあり、残りは「貯蔵鉄」として肝臓などに蓄えられています。鉄の量が足りないときは、まずは貯蔵鉄から使われます。それでも足りないときに血液の中の鉄が使われ、この状態が続くことでヘモグロビンが作られなくなります。
鉄欠乏性貧血について詳しくは下記の記事でご紹介しています。
2. 「再生不良性貧血」
赤血球をつくる工場の中に問題があり起こります。
赤血球がつくられる工場である骨髄な中にある、各血液細胞のもととなる造血管細胞に問題があり、血球成分が作れなくなります。多くの場合、原因がわからず、厚生省の難病指定を受けています。また、血球とは、赤血球だけでなく、白血球や血小板も含めますので、これら全体が少なくなってしまいます。
再生不良性貧血について詳しくは下記の記事でご紹介しています。
3. 「巨赤芽球性貧血」
こちらも、工場内で問題があり起こります。
造血幹細胞は、ビタミンB12と葉酸の助けがないと、赤血球へと成長できません。これらが不足することで、正常に血が作られなくなりますが、食事の習慣によってビタミンが不足したとは考えにくく、多くの場合は、ビタミンの吸収しにくくなる、胃切除や萎縮性胃炎、ビタミンが大量に消費されるガンやアルコール中毒が原因です。
巨赤芽球性貧血について詳しくは下記の記事でご紹介しています。
4.「溶血性貧血」
赤血球つくられた後に問題があり起こります。
つくられた赤血球が寿命(120日)よりも早くこわされてしまいます。多少早くこわされるくらいならカバーできますが、15日~20日以上はやくこわされるようであれば、赤血球をつくることが追い付かなくなり、症状があらわれます。また、さまざまな病気がかくれていて、生まれつきのものと後天的なものに分けられます。
溶血性貧血について詳しくは下記の記事でご紹介しています。
ヘモグロビンが少ないと酸素が不足する
ヘモグロビンが少ないと、酸素を運ぶ能力が低下します。つまり、酸欠状態になってしまうわけです。酸欠と聞くと、どのような症状を想像しますか?
例えば登山の場合、高い山に行くほど酸素の量は少なくなっていきますが、空気中の酸素が16%以下だと、「脈が早くなる」「頭が痛くなる」「吐き気がする」「集中力が低くなる」などの症状が現れます。
12%より低くなると、「めまいがする」「筋力が低くなる」といった症状が現れます。
また、10%を切ってくると、「嘔吐する」「顔がまっさおになる「意識がなくなる」などの症状があらわれ、さらに8%を切ると、「けいれん」や最悪の場合「呼吸が停止する」など、とても危険な状態になります。
貧血の症状とは酸欠によるもの
貧血によって、各組織へ十分な酸素が運ばれなくなると、酸素は脳や心臓などへ優先的に酸素を運ぶため、末端の筋肉などに行き渡らなくなり、冷え性・肩こりなどを引き起こしたり、疲れやすくなったり、顔色が悪くなったり、集中力が低くなったりします。
さらに酸欠が続き、脳の血液が不足すると、「めまい」「たちくらみ」「失神」などの症状があらわれます。
貧血のメカニズム~まとめ~
貧血のメカニズムには、その種類ごとに異なります。血液について、すこしだけ知る事で、そのメカニズムは驚くほどかんたんに理解する事ができます。
- 血液の役割のひとつは酸素や栄養を運び、二酸化炭素や老廃物を回収し運ぶこと
- 血液は「けっしょう」と「けっきゅう」からできている
- 「けっきゅう」の成分である赤血球の大部分がヘモグロビンというもの
- ヘモグロビンは鉄とタンパク質からできている
- このヘモグロビンは全身に酸素を運ぶはたらきがある
- 赤血球がつくられる工場は骨髄の中の造血幹細胞
- 赤血球はおもに鉄とタンパク質を材料とし毎日つくられている
- つくられた赤血球は120日たつと破壊される
血液のなかの赤血球は、つくられてはこわされるを繰り返しています。貧血のメカニズムは、おもに次の4つです
- 赤血球をつくる材料の鉄が不足している
- 原因不明だが、つくられる工場(造血幹細胞)に問題があり、赤血球がつくられない
- おもにビタミンが大量に消費される病気によって、ビタミンと葉酸が不足し、工場で赤血球がつくられない
- 生まれつき、または後天的ななんらかの病気によって、つくられた赤血球が120日より早くこわされてしまう
あなたが貧血かどうかは、血液検査でヘモグロビンの量を調べる事でかんたんに診断されます。種類によって対処方法はちがいますが。1番多い鉄欠乏性貧血の場合は、原因がはっきりしているため、きちんと対処すれば確実に治る病気だと言われています。
「疲れが取れにくい」「肩こりごひどい」などといった、貧血とは思いにくい症状でも、もしかすると鉄が不足している事が原因かもしれません。
積極的に予防・対処する事で、元気な自分をとりもどしましょう。
この記事が気に入ったら
いいね!しよう