発作性夜間ヘモグロビン尿症(paroxysmal nocturnal hemoglobinuria:PNH)は、発作性夜間血色素尿症とも言われます。
PNHは特殊な病気で、後天性の溶血性貧血であり、また再生不良性貧血に近い病気でもあります。
後天性とは生まれた時は通常ではあったものの、人間生活を送っている途中に事故や環境など様々な事柄を原因として持つこととなってしまった病気や障害の性質。
引用:「Wikipedia」
PNHの原因
発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)では、後天性に血液細胞の膜のたんぱく質に異常が生じて溶血が起こりやすくなります。
溶血とは血清・血漿が赤みがかっていることを意味します。これは血液の中の赤血球が何らかの原因で壊れ、赤血球中に含まれる血色素(ヘモグロビン)が血清・血漿中に出てくることにより起こります。
PNHの症状
寝ている間に溶血が起き、朝起きてからの尿の中にヘモグロビン(血色素)が多く含まれるために、まるでコーラのような茶褐色、もしくは黒褐色の尿が出ることが特徴です。
感染症などがきっかけで溶血が悪化することもあります。
おもな症状は以下の3つです。
- 血管内溶血
- 骨髄不全
- 血栓症
さらに、最近になり明らかになったことは、
- 腹痛
- 嚥下障害
- 男性機能不全
などといった様々な付随症状も、溶血に関連しているという事です。
貧血によって、顔色が悪くなったり、息切れ、動悸、だるい、疲れやすいなどといった症状がみられることが多いのですが、ゆっくり進行するので、貧血の症状だと自覚しにくい事も少なくありません。
▼貧血による酸素不足の症状について
PNHの分類
発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の病状は、血管内溶血、骨髄不全、血栓症の3つに大きく分類されます。
血管内溶血
溶血を主体としたPNHには、
- 白血球数や血小板数には著しい変化のないタイプ
- 溶血とともに白血球数減少、血小板減少を伴うタイプ
とがあります。
白血球が少なくなる事で、肺炎などといった感染症を起こしたり、血小板が少なくなる事で、皮膚や粘膜に点状の出血が見られたり、血が固まりにくくなったりします。
骨髄不全
PNHの過程において、次第に骨髄の細胞数が減少することもあります。
また、再生不良性貧血の過程において現れるPNHを、再生不良性貧血PNH症候群とよびます。
血栓症
日本人にはまれですが、PNHでは血管内に血液がつまる「血栓症」を起こすことがあります。
手術や出産などに伴って、血栓症が起きやすいことも知られています。
PNHの治療
発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の根本的な治療方法は、造血幹細胞移植です。
造血幹細胞移植は、通常の化学療法や免疫抑制療法だけでは治すことが難しい血液がんや免疫不全症などに対して、完治させることを目的として行う治療です。
しかし、移植を行う明確な基準はなく、3 大症状である血管内溶血・骨髄不全・血栓症に対する対症療法が中心です
ひどい溶血発作があると急激に貧血が進み、赤血球輸血が必要になります。
PNHの病状は必ずしも一定ではなく、ばらく落ち着いた状態が続き、あるとき急に溶血発作が強くなって貧血が悪化するということを繰り返す傾向があります。
エクリズマブの登場
発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の新しい治療薬として、エクリズマブが登場しました。エクリズマブは、溶血に関与する補体という物質と結びつき溶血を抑えてくれます。
定期的にエクリズマブの点滴静脈注射を続ける事で溶血発作が抑えられ、貧血が改善していきます。
しかし、PNHという病気そのものを治すものではありませんから、治療の継続が必要になります。
参考文献
- 日本内科学会雑誌 第100巻 第 7 号・平成23年 7 月10日
- 「貧血と血液の病気」浦部晶夫著 インターメディカ
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