血液はどこでどうやってつくられるのでしょう?
血液とは私たちの体の中を流れる、まっ赤な液体のようなもので、血漿と呼ばれる黄色い液体と、血球(血液細胞)というものからできています。
言いかえると、血漿(けっしょう)と呼ばれる液体の中に、血液細胞が浮かんでいるものが血液です。
▼血液の成分と役割に関しての記事
血液細胞は、赤血球、白血球、血小板から成っていて、それぞれにとても大切な役割があります。
貧血とは何かということを理解するうえで、血液の役割について知ることはもちろん、血液の寿命や、つくられる場所などついて知ることも、とても大切な事なんです。
血液がつくられる場所
血液細胞は、大人の場合、骨髄(こつずい)と呼ばれる、骨の中の赤いところで作られています。
ママのおなかの中にいる初期(胎児の初め)では、「卵黄のう」というところで作られます。
卵黄のうとは、おなかの中で必要な栄養を胎児に与えるための袋のことです。
妊婦健診の超音波検査で、赤ちゃんのそばにある小さな丸い円がそれにあたり、胎盤が成長していくと、赤ちゃんはママから直接栄養をもらうことができるので、徐々に小さくなっていき、妊娠13週目(4カ月)ころにはその役目を終えます。
それに合わせて血液をつくる場所も変わっていき、胎児期3~7カ月ごろには、おもに肝臓で血液細胞がつくられます。
また、この時期には、1部分は脾臓でもつくられます。そして、肝臓や脾臓でつくられる分も徐々に少なくなっていき、骨髄でつくられるように置きかえられていきます。
うまれてくるころには、骨髄ですべてがつくられるようになり、その後もずっと骨髄でつくられます。
血液をつくる場所は徐々に少なくなる
うまれたばかりのころから小児の間は、体中の骨髄で血液細胞をつくっています。ところが年齢を重ねるごとに、血液細胞をつくる場所は少なくなり、20歳を過ぎると頭蓋骨・胸骨・脊柱骨・骨盤など、一部分だけで血液をつくります。
血液細胞をつくらなくなった場所は、脂肪に置きかえられます。活発に血液をつくり続けている骨髄は赤色をしているので「赤色骨髄」、脂肪に置きかえられた部分は黄色をしていて「黄色骨髄」と言われています。
骨髄には前駆細胞がぎっしり
血液細胞をつくることを「造血」と言いますが、造血が活発におこなわれている赤色骨髄には、血液細胞の元となる細胞がぎっしりです。
これらの細胞は、赤血球・白血球・血小板などになる細胞で、もとはすべて同じ細胞。造血の元となる細胞という意味で、これらの細胞を「造血幹細胞」といいます。
この造血幹細胞が分化していき、それぞれの血液細胞に変化していくのです。(分化とは、ある細胞が分裂して、ある機能をもった、特異的で限定的な細胞に変化すること)
造血幹細胞が、赤血球に変化していくか、顆粒系に変化していくか、血小板系に変化していくかなど、どの方向に変化していくかが決まった、分化する前段階の細胞を「前駆細胞」といいます。
骨髄には、この前駆細胞がぎっしりとつまっていて、これらが成熟すると骨髄から血管の中に流れでて全身を回ります。
血液細胞には寿命がある
血液細胞には寿命があり、その種類によってちがいます。寿命がもっともはっきりしているのは赤血球です。
赤血球の寿命
約120日と、もっとも寿命がはっきりとしています。赤血球は、赤芽球から核が抜け落ちると骨髄から血液の中にでてきます。核が抜け落ちたばかりの赤血球は「網赤血球」と言われます。
この網赤血球から老化して脾臓などでこわされるまでの期間が約120日です。
白血球の寿命
白血球は、好中球、好酸球、好塩基球、単球、リンパ球とがあり、寿命はそれぞれの細胞によって違います。
好中球の寿命
白血球のなかで1番多くの割合を占めているのが好中球です。寿命は短く、血液にでてきてから数時間です。
好酸球の寿命
好酸球の寿命も短く、数時間から長くてもせいぜい1日くらいです。
好塩基球の寿命
好塩基球の寿命は数日間と言われています。
好中球、好酸球、好塩基球をまとめて「顆粒球」といいますが、これらの寿命は数時間から数日と考えられています。
単球の寿命
単球は、血液の中に入ってから24時間くらいでいろいろな組織に移り、マクロファージというアメーバ状の細胞となります。
マクロファージは白血球の1種。死んだ細胞やその破片、体内に生じた変性物質や侵入した細菌などの異物を捕食して消化し、清掃屋の役割を果たす。とくに、外傷や炎症の際に活発である。免疫系の一部を担い、免疫機能の中心的役割を担っている。
引用:「ウィキペディア」
リンパ球の寿命
リンパ球の寿命はほかの白血球よりも長いです。3~4年、もしくは4~5年のものが多く、なかには20年くらい生きるものもあります。
血小板の寿命
血小板は、骨髄の巨核球というものの細胞質がちぎれてできますが、骨髄から血液の中に出ると、約10日くらいの寿命だといわれています。
このように、血液細胞はそれぞれにちがった寿命をもっていて、寿命をむかえた細胞はおもに脾臓などで処理されます。
寿命がきても血液細胞はすぐつくられる
それぞれの血液細胞は、寿命がきて処理されてもまたすぐに作られ、その数を一定に保っています。
それぞれの血液細胞が一定に保たれるにはさまざまな調節がなされています。
貧血ともっとも関係の深い赤血球についても、酸素が不足しないよう、その量を一定に保つ仕組みがあります。
赤血球の分化と成熟
赤血球が骨髄でつくられる順番を、血液細胞の分化の順番であらわすと、造血幹細胞から赤芽球系前駆細胞、赤芽球を経て赤血球となります。
赤血球のもととなる細胞を赤芽球と言います。赤芽球から赤血球になるときに、細胞の中から核が抜け落ちます。これを脱核と言いますが、脱核したばかりの若い赤血球を網赤血球と言います。
赤血球には核がなく、平べったい円盤のような形をしています。
成熟するには造血因子の助けが必要
これまでに、赤血球、白血球、血小板といった血液細胞は、骨髄にある造血幹細胞が分化して生まれるとご紹介してきました。
赤血球に分化が決まった造血幹細胞を「赤芽球系前駆細胞」といいます。
赤芽球系前駆細胞が分化を繰り返し成熟していくためには、エリスロポエチンという造血因子の助けが必要です。
血液細胞が成熟していく過程の中では、「造血因子」という、血液細胞の産生を促進してくれる物質の助けが必要です。
代表的なものには以下のようなものがあります。
- エリスロポエチン
(赤血球の産生に必要) - 顆粒球コロニー刺激因子
(G-CSFといい、好中球の産生に必要) - トロンボポエチン
(血小板の産生に必要)
病気が原因となる貧血の代表的なもの中に「腎性貧血」があります。赤血球の産生に必要なエリスロポエチンはおもに腎臓で作られますが、慢性の腎不全などによって、この造血因子が少なくなるので、その結果、赤血球がうまく作られなくなり、貧血を起こしてしまいます。
▼このような貧血を腎性貧血といいます。
貧血の種類と血液の関係
血液がつくられる場所や、寿命について、また、血液細胞がどのように成熟して赤血球となるかをごしょうかいしてきました。
なぜ貧血を理解するために、これらの事を知る必要があったのでしょうか?
造血幹細胞から赤血球へと成熟していく過程のどこかに異常があることで、赤血球がつくられる量が少なくなります。
その過程のどこに異常があるかによって、貧血はいくつかの種類にわかれます。
▼貧血の種類に関しての記事
血液を作るのに欠かせない栄養素
血液を作るうえで、食事から吸収される栄養素はとても重要なはたらきをしています。
鉄分は赤血球をつくるうえでとても重要な物質。鉄は赤血球に含まれるヘモグロビンをつくるときの材料となります。鉄分が足りないと、赤血球をつくる量が少なくなり貧血を起こします。
▼このような貧血を鉄欠乏性貧血といいます。
ビタミンB12や葉酸は、細胞がDNA合成をするうえで必要不可欠な物質です。細胞が分化を繰り返して生きてゆくときには、DNA合成というものが行われます。そのため、ビタミンB12や葉酸が不足すると、DNA合成に悪い影響をあたえ、さまざまな異常が現れます。赤血球だけでなく、血小板や白血球にも影響があります。
▼このような貧血を巨赤芽球性貧血といいます。
血液の寿命とつくられるしくみ~まとめ~
血液細胞は「骨髄」で作られています。
血液がつくられている骨髄には、血液細胞の元となる細胞がぎっしり詰まっています。これらの細胞を「造血幹細胞」と言います。
数ある血液細胞も、もとは同じ細胞です。
この細胞が、どの方向に変化していくか決まった、分化する前段階の細胞を「前駆細胞」と言います。
この前駆細胞が分化を繰り返し成熟していく事で、赤血球や白血球、血小板といった血液細胞へとなります。
その血液細胞には寿命があり、細胞の種類によってそれぞれ違います。
- 赤血球 120日
- 好中球 数時間
- 好酸球 数時間~1日
- 好塩基球 数日間
- 単球 24時間でマクロファージへ
- リンパ球 3~5年 長いもので約20年
- 血小板 約10日
これら血液細胞は、寿命がきてもまたすぐに作られ、その数を一定に保っています。
貧血と関係の深い赤血球の成熟までの流れは、
造血幹細胞→赤芽球系前駆細胞→赤芽球→赤血球となります。
また、赤芽球系前駆細胞が成熟していくためには、エリスロポエチンという造血因子の助けが必要です。
血液を作るうえで、食事から吸収される栄養素はとても重要なはたらきをしています。
なかでも鉄分はヘモグロビンの材料となり、ビタミンB12や葉酸は、造血幹細胞が分化していく際に必要不可欠です。
これらの事が、貧血とは何かを知るうえで、とても大切な事です。
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