貧血の症状といえば、動悸や息切れ、めまいや頭痛、全身がだるいなどといったことが1番に浮かびます。しかし、むくみ(浮腫)も貧血の症状の一つです。
なぜ貧血でむくみが起こるのか、ここではその代表的な3つの原因についてご紹介します。
むくみ(浮腫)の原因は貧血かも!
夕方になると足がパンパンになってしまう。原因や対策はたくさんあります。
- 下半身の筋力がないから運動をしよう
- ふくらはぎのポンプ機能をサポートするために着圧ストッキング(ソックス)をつけよう
- カリウムやマグネシウムを積極的にとろう
- むくみをとるために毎日マッサージをしよう
などなど、他にもたくさんあるかと思います。
しかし、あなたのむくみ(浮腫)の原因が貧血にあった場合、これらの対策は的外れなものになっている可能性があります。
貧血の症状は気づきにくい
「貧血の症状はないから大丈夫。」そう決めつけるのは早いかもしれません。貧血は徐々に進行していくため、自覚症状がない場合が多いようです。
だから、むくみ(浮腫)や、肩こり、イライラ、疲れがとれない、集中力がないなどといった貧血の症状は、体質や日々の忙しさなどが原因だと思い、貧血を疑うことは少ないのです。
貧血が原因である可能性を知ることで、より対策の幅が広がり効果的なものになるのだと思います。
むくみ(浮腫)のメカニズム
貧血の症状でむくみ(浮腫)が起こる原因を知るにあたっては、むくみが起きるメカニズムについて理解が必要です。少し専門的な言葉もでてきますが、誰にでもわかるようかんたんにご説明させていただきます。
むくみ(浮腫)のメカニズムについては「血液の流れ」と「浸透圧」について理解する必要があります。
血液の流れについて
血液によって運ばれた酸素やたんぱく質などは、動脈から毛細血管へと流れ、「間質」という細胞と細胞のあいだをうめる組織へと広がり、細胞へと届けられます。そして、老廃物を回収し静脈の毛細血管やリンパ管へ戻ります。
この間質にある水分を「間質液」といいます。つまり、血液と間質液が、毛細血管の壁をへだてて、栄養素や老廃物のやりとりをしているわけです。
栄養や水分の流れを整理してみる
私たちのカラダの中では、絶えず酸素や栄養素、老廃物などのやり取りがなされています。これらを運ぶことが血液のおもなお仕事ですが、その流れを運送業者さんに例えてみます。
酸素や栄養素が荷物、それを運ぶトラックが血液です。
- 心臓から動脈という幹線道路を通り
- 毛細血管という細い路地に入って
- 間質という目的地で荷物(酸素や栄養素)の積み下ろしをする
- 荷物は各細胞に送り届けられ、同時に老廃物などのゴミを回収する
- 間質から毛細血管へと戻り
- 静脈を通って心臓へ帰る
このような流れになります。
浸透圧について理解する
例えば、濃度がちがう2つの液体があるとします。
半透膜という、水は通すけど他の分子は通さない、とても目の小さなフィルターで仕切られた容器の中に、この2つの液体を同じ量だけ入れます。
そうすると、濃度を同じにしようと水だけが濃度の低いほうから高い方へ移動します。この移動のことを「浸透」といい、その圧力を「浸透圧」といいます。
浸透圧の身近な例
身近なところでは、キュウリに塩をかけると、水分が外に出てしんなりします。
キュウリの表面は半透膜でおおわれています。そこに塩をかけると、キュウリの内側より外側の塩分が濃いため、塩分が薄いほうから高い方へ水が流れる、つまりキュウリの中の水が外にある塩の方に出ていってしまうのです。
血液の浸透圧はたんぱく質でコントロール
先ほどの例でご紹介した2つの液体を、栄養素や老廃物のやりとりをしている「血液」と「間質液」に置き換えます。あいだを仕切るフィルターが毛細血管の壁です。
血液と間質液との浸透圧は、あるものによってコントロールされています。それは「アルブミン」というたんぱく質です。アルブミンは大きいので細胞膜(半透膜)を通過できません。
血液のアルブミンが一定に保たれていることで、血液と間質液のバランスも一定に保たれているわけです。
アルブミンについて詳しく
血液は血漿という液体と、血球(血液細胞)という細胞からできています。そのため、血液を試験管に入れてそのままにしておくと、上澄み液と沈殿物に分かれます。
この上澄み液を「血清」と言い、そのなかにあるタンパク質が「血清タンパク質」です。
この血清タンパク質の約6割がアルブミンで、残りの約3割をグロブリンといい、おもに肝臓でつくられています。
むくみ(浮腫)とは間質液が増える事
もうお分かりですね。
何らかの理由で血液中のアルブミンが少なくなることで、血液の浸透圧が下がり、間質液に水分を奪われてしまいます。その結果間質に水がたまった状態がむくみ(浮腫)です。
人のからだは常に、血管内の方が濃くなるように保っています。血液中のアルブミンが正常なら、血液も間質液も一定の量ですが、血液中のアルブミンが少なくなると、薄くなった方から濃い方、つまり血液から間質液へ水がどんどん流れ出ていきます。そうなると間質に水が溜まり、むくみ(浮腫)が起こります。
貧血と浮腫(むくみ)が起こる3つの原因
貧血とは、酸素を運ぶヘモグロビンの濃度や、赤血球の数、血液細胞の割合が基準値を下回ることとされています。つまり、血液が薄くなっている状態の事です。
むくみは血液中のたんぱく質(アルブミン)が不足することで起こるとご紹介しました。貧血とむくみ(浮腫)にはどのような関係があるのでしょうか?
具体的には次の3つの原因が考えられます。
- たんぱく質が不足している
- 赤血球が少なくなっている
- 心臓へ負担がかかっている
1.たんぱく質不足で貧血?
貧血で最もおおいのが鉄欠乏性貧血。赤血球に含まれるヘモグロビンの材料である鉄分が不足することが原因です。言い換えるなら、鉄分不足がによって体調が悪くなっている状態です。
最近では、鉄欠乏性貧血の治療のため鉄剤を服用しても、貧血が治らない人が増えてきたそうです。詳しく血液検査をすると、血中の総たんぱくの値や、アルブミンが少ないことが特徴とされています。
ヘモグロビンは鉄分とたんぱく質からできています。たんぱく質が不足すると、グロビンが不足し、ヘモグロビンが形成できなくなってしまうのです。だから、ヘモグロビンの材料は鉄分だけではありません。
たんぱく質不足=鉄分不足
鉄欠乏性貧血は鉄分不足だけが原因と思い込んではいけません。
たしかに鉄分は吸収しにくく、失う機会も多いため不足しがちです。でも栄養が偏りたんぱく質が不足しているような状態なら、もっと不足しがちな鉄分は足りているわけがなく、鉄分不足も同時に発生していることがほとんど。
だから、たんぱく質不足=鉄分不足、その結果として鉄欠乏性貧血を発症しやすいとなります。さらにこの状態では、同時にアルブミンも減っていて、むくみ(浮腫)が起こりやすくなります。
アルブミンを増やす方法
たんぱく質・鉄分不足によって鉄欠乏性貧血となり、カラダがむくみやすくなっている場合では、対策方法としての、筋力をつけるためのトレーニングや、マッサージなどはではなく、体内のたんぱく質を増やすこと。つまり食事です。
▼たんぱく質を効果的にとる方法についての記事
2.赤血球が減る事でむくむ
貧血とは血液が薄くなることであって、血液全体の量が減ることではありません。赤血球が少なくなれば、血液中の水分も増えてしまうことが確認されています。
貧血になると?(症状)
1. 赤血球量の減少による症状:顔面蒼白、浮腫、ふらつき
2. 酸素不足による症状:頭痛、めまい、倦怠感、狭心症、筋肉のこわばり
3. 代償機序による症状:動悸、息切れ
貧血らしくない症状で受診されることもあります。
赤血球を増やす方法
貧血には、原因ごとにいくつかの種類があります。なぜ貧血になったかによって貧血を改善させる(赤血球を増やす)方法は違います。
大切なのは、しっかりと検査してもらい、なぜ貧血になったのかを特定するための検査をしてもらうことです。
3.心臓に負担がかかっている
血液には、酸素を運ぶという重要なお仕事があります。貧血になると、この「酸素を運ぶチカラ」が弱くなってしまいます。
酸素は体中の組織で必要不可欠なもの。不足しないように呼吸の回数が増えます。貧血の症状でハァハァと息切れがするのはこのためです。
さらに貧血の症状で動悸があります。これは、呼吸の回数だけでなく、送り出す血液の量も増やそうとするため心臓のポンプ作用が強くなるからです。
むくみは心臓の病気の可能性がある
貧血では、酸素不足を補うために、血液を送るポンプである心臓に負担がかかるとご紹介しました。
長いあいだ貧血が続く、つまり心臓に負担がかかり続けることで、心不全などを引き起こす可能性があるとされています。
むくみ(浮腫)が起こる原因はたくさんありますが、その中には、ある病気の症状としてあらわれるものがあります。その代表的な病気が心臓の病気です。
むくみがある場合、心臓への負担が大きいことで起きている可能性もありますので、しっかりと検査してもらうことをおすすめします。
貧血でむくみがおこる原因~まとめ~
貧血はわかりにくく、徐々にやってきます。そのため「むくみ(浮腫)の原因が貧血かも?」とは考えにくいかもしれません。
しかし、いろんなむくみ対策をしているのになかなか効果がなかったら、貧血に着目してみましょう。マッサージの効果も一時的なもので、同時にイライラする、だるい、疲れが取れないなどといったときは、もしかすると貧血かもしれません。
より詳しい血液検査によって、たんぱく質やアルブミンの値を調べてもらうことをおすすめします。
この記事が気に入ったら
いいね!しよう