生きていくうえでとても重要な鉄分。ここでは食べ物やサプリメントなどに含まれる鉄分の種類「ヘム鉄」「非ヘム鉄」「キレート鉄」の違いや特徴について詳しくご紹介します。
血液中のヘモグロビンには、呼吸によってとりいれた酸素を全身に運ぶという大切な役割があります。ヘモグロビンの働きはとは鉄の働きのことです。
鉄分の役割と種類
酸素を運搬する以外に、体の隅々でつくりだされるエネルギーをつくりだすことや、精神をコントロールする神経伝達物資のバランスを保つことにおいて、鉄分の働きは欠かすことができません。
鉄分が不足することで起こる代表的なものに「貧血」があります。それだけでなく、鉄分は生きていくうえで必要な様々な働きの中心的な役割があります。
貧血や鉄分不足の改善のためには、鉄分の特徴や種類について知っておくことはとても重要なことです。
3種類の鉄
鉄分の種類は次の3つが主です。
- ヘム鉄
- 非ヘム鉄
- キレート鉄
鉄分は体内で合成されるものではありませんから、食事によって毎日摂取しないといけません。
食べ物に含まれる鉄分は「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」とに分かれます。ヘム鉄とは、鉄イオンが「ポルフィリン環」に包まれていて、肉や魚などの動物性食品に多く含まれます。それ以外の鉄を非ヘム鉄といい、吸収率に大きな違いがあります。(ヘム鉄では15~20%、非ヘム鉄2~5%)
▼ヘム鉄・非ヘム鉄を多く含む食べ物の一覧です。
自然な食べ物以外で鉄分をとる方法としては、鉄剤やサプリメントがあります。同じくヘム鉄と非ヘム鉄のものとに分かれますが、そのほかに「キレート鉄」というものがあります。
ヘム鉄とは
ヘム鉄は動物性食物に含まれ、特に赤身の肉や魚に多いです。
ヘム鉄は2価鉄(Fe²⁺)とポルフィリンと呼ばれる環状の有機化合物からできており、ヘムというタンパク質につつまれています。
この、鉄が包まれている構造によって、次のような特徴があります。
ヘム鉄の特徴
- ポルフィリンが鉄イオンを覆っているので胃腸にダメージを与えない
- 鉄の吸収を妨げるもの(お茶のタンニンなど)からの影響もほとんどうけない
このような特徴から、ヘム鉄は吸収率が良く、食べ物にふくまれるヘム鉄の15~20%ほどが吸収されると言われています。
ヘム鉄の吸収メカニズム
体内に取り込まれたヘム鉄は、ヘムオキシゲナーゼ(HO)という酵素によって分解され、鉄単体になります。
それからヘムキャリアたんぱく質(HCP1)という輸送体によって吸収されると言われていますが、ヘム鉄の吸収に関しては、まだ明らかになっていないことが多いようです。
非ヘム鉄とは
非ヘム鉄は、2価鉄(Fe²⁺)、3価鉄(Fe³⁺)という鉄イオンの状態で存在していて、食べ物に含まれる非ヘム鉄のほとんどは3価鉄です。ヘム鉄のように、なにかに包まれてる状態ではないことから、次のような特徴があります。
非ヘム鉄の特徴
- 胃腸にダメージを与えることがある
(貧血治療で病院から処方される鉄剤の多くは非ヘム鉄。飲むと吐き気がしたり胃が気持ち悪くなることがあるのはこのためです。) - 吸収を妨げるタンニンなどの影響を受けやすい
(タンニンを多く含むお茶などと一緒に非ヘム鉄とをとると、鉄の吸収率が大幅に下がるので食前・食後の30分~1時間は避けた方が良いとされています。)
さらに3価鉄は、このままの状態だとほとんど吸収されないため、腸で2価鉄へ還元されます。これらの特養から非ヘム鉄の吸収率は低く、2~5%ほどと言われています。
非ヘム鉄の吸収メカニズム
3価鉄の形で存在する非ヘム鉄は、このままではほとんど吸収されないので、「ビタミンC」や、「Dcytb」という酵素によって2価に還元されます。
そして、小腸に存在している輸送体「DMT1」によって細胞へ吸収されます。
キレート鉄とは
キレート化された鉄をキレート鉄といいます。キレートとはある分子が鉄などの金属イオンと強く結合し、安定な化合物(錯体)を作る作用です。アミノ酸が結合している鉄イオンの場合はアミノ酸キレート鉄といい、代表的なサプリメントにフェロケルがあります。
キレート鉄のメリット
- 胃にやさしく便秘になりにくい
- 吸収率が良い
- ヘム鉄よりも安価
アミノ酸キレート鉄の場合では、小腸内で吸収される際に、鉄としてではなくアミノ酸として吸収されるので、吸収率がとても良いです。
また、アミノ酸によってキレート(はさまれた)されていることで、腸にやさしいという特徴があります。
キレート鉄のデメリット
- 過剰症のリスクがある
鉄分はとても吸収しにくいもの。鉄分不足によって受ける体への影響はとても大きいものですが、逆に過剰によるリスクもあります。
食べ物から入る鉄によって鉄過剰になることはほとんどないと言われていますが、キレート鉄のサプリメントは、手軽に鉄を補給できますが、逆に過剰になるリスクがあると言われています。
大切な事は、自分の体内の鉄量をしっかり把握しながら、補給を続けていくことです。体内の鉄量を知るうえ重要な指標となるのが、貯蔵鉄を知ることができるフェリチンです。
さいごに
ここでは、ヘム鉄・非ヘム鉄・キレート鉄のメリット・デメリットや吸収についてご紹介しました。
「結局のところ、貧血や鉄分不足を改善するためにはどれがいいの?」となるかと思いますが、その答えをだすのは単純なことではありません。
なぜなら、それぞれ鉄分の吸収率は、「鉄分不足の度合い」や「鉄の摂取量」、「炎症などが有無」によって大きく異なってくるからです。
大切なことは、自分の体の状態を把握し、自分にあった対処方法を確立していくことです。そのためには、医師との連携ももちろん重要ですし、貧血や鉄分に対しての知識を持つことも重要です。
貧血サポートラボでは、貧血や鉄分不足を改善するための有意義な情報を発信してまいりますので、他の記事もぜひご参照ください。
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