牛乳貧血というものをご存知ですか?
カルシウムが豊富、栄養価が高いなどといったイメージが強い牛乳ですが、飲み過ぎることで貧血を起こしてしまう可能性があります。
牛乳貧血とは?
1981年、「牛乳貧血」が日本で初めて報告されました。
牛乳を大量に(症例では幼児期に牛乳を1日600mL以上3カ月以上摂取)飲み続けたことで、食事からの鉄分摂取量が少なくなり、結果として鉄分不足となり貧血へ至った例でした。
牛乳は、たんぱく質、脂質、炭水化物、ミネラル、ビタミンをバランスよく含む食品です。
しかし、乳児期の後半から、幼児期にかけて牛乳を大量に飲むと、鉄欠乏性貧血と低たんぱく血症を合わせて発症する「牛乳貧血」になる可能性があります。
- 乳児期
- 生まれてから1歳までの期間を乳児期といいます。
- 幼児期
- 一般的には1歳から6歳までの期間を幼児期といいます。
牛乳貧血の原因
乳幼児期に牛乳を大量に飲むことで起こる「牛乳貧血」。その原因について前提になるのが以下の2つです。
- 牛乳に含まれる鉄分は少ないこと
- 牛乳に含まれる鉄分の吸収率が低いこと
牛乳に含まれる鉄分
栄養価が高いイメージのある牛乳ですが、牛乳には鉄分があまり含まれていません。
どれくらいの量なのか、母乳とミルクとで比較してみましょう。
鉄分量の比較
母乳に含まれる鉄分 | 0.2mg/100ml |
---|---|
ミルクに含まれる鉄分 | 0.6mg/100ml |
牛乳に含まれる鉄分 | 0.1mg/100ml |
このように、牛乳に含まれる鉄分はとても少ないことが分かります。
牛乳に含まれる鉄分の吸収率
鉄分補給という観点では鉄分は含まれる量だけがすべてではありません。
それは、食べ物によって鉄分の吸収率が大きく異なるからです。
それでは、鉄分の量と同じように比較してみましょう。
吸収率の比較
母乳の鉄分吸収率 | 約20% |
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ミルクの鉄分吸収率 | 約7% |
牛乳の鉄分吸収率 | 約10% |
牛乳の鉄分は、消化管での鉄の吸収についても十分ではありません。
整理すると以下のようになります。
- 母 乳:0.2mg×20%=0.04mg
- ミルク:0.6mg×7%=0.042mg
- 牛 乳:0.1mg×7%=0.01mg
牛乳では鉄分があまり得られない
このように、牛乳から得られる鉄分は極めて少ない事がお分かり頂けると思います。
生まれてから6ケ月以降は鉄分不足になりやすいことに加え、鉄分が含まれる量が少なく、吸収率が悪い、一般的な市販の牛乳を飲み過ぎると、貧血が起こりやすくなってしまうという事です。
牛乳貧血の症状
牛乳貧血は、1日600ml以上、3ヶ月以上飲み続けた場合、一般的な貧血(鉄分不足)の症状にくわえて、低たんぱく血症も合わせて起こることから、「顔色が悪い」「むくみ」などが起こりやすいと言われています。
栄養価が高いからといって、乳幼児には飲ませ過ぎないように注意が必要です。
さいごに
これまでに、牛乳貧血の原因と症状についてご紹介いたしました。
日本人の鉄分摂取の推奨量は、1~2歳児で1日あたり4.0~4.5mg、3~5歳児で5.5mgですから、牛乳だけで鉄分をおぎなうことはできません。
ですから離乳後の幼児には、鉄分を十分に含む食事によるバランスの良い栄養摂取がなにより大切です。
▼子どもでも安心。自然な食べ物で鉄分補給
参考文献・サイト
- 鉄の食事摂取基準2015年度版
- 一般社団法人Jミルク 牛乳乳製品の知識
- 貧血大国日本 山本佳奈著 光文社新書
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