鉄分不足が招くものは貧血だけではありません。最近では「うつ病」など心の病気にも鉄分不足が大きく関係していると言われてきています。女性が最もなりやすい時期は産後です。「産後うつ」と呼ばれ、その症状はとても激しく悲惨です。
憂鬱(ゆううつ)になったり、人と会うのがイヤになったり、ひどい場合は正常な思考ができなくなり、子どもを虐待したり、無理心中したりなどの悲しい事件を起こす原因と考えられています。
日本人女性のほとんどが鉄分不足ですから、「産後うつ」を招く可能性は誰にだってある事です。
しかし、鉄分不足は、効果的に鉄分を摂取できれば必ず改善します。「鉄分の補給で心の病気が良くなるわけがない!」そう思っている方も、この記事を読んで頂ければ「その可能性はあるかもしれない。」と思っていただけると思います。
鉄分とうつ病の関係
うつ病は、女性ホルモンの分泌がストレスによって異常が起こることが原因とされてきましたが、最近では、それに加え、鉄分・たんぱく質不足が原因かもしれないと言われてきています。
パニック障害を含む不安障害、うつ病に悩む女性と鉄分不足の関係について、ふじかわ心療内科クリニック藤川徳美著、「うつ・パニックは「鉄」不足が原因だった」では、このように紹介してあります。
患者さんのフェリチン値を測り始めたとき、ほとんどの人の値が低いことに、私は心底驚きました。そして当院では2012年4月から、鉄剤投与を本格的に導入し、顕著な効果を認めています。
引用:「うつ・パニックは「鉄」不足が原因だった」藤川徳美著 光文社新書
フェリチンとは、鉄を貯蔵できるたんぱく質のことです。この値が表すのは、体内にどれだけの鉄が蓄えられているかということです。
フェリチンの基準値は低すぎる
日本におけるフェリチンの基準値は、以下のようになっています。
- 男性:21~282 ng/ml
- 女性:5~157 ng/ml
この基準値については下限の値が低すぎると言われています。アメリカにおいて、フェリチン値100以下は鉄分不足とされていて、40以下になると出産も認められていない程です。
鉄分不足は、妊娠・出産・育児において大きなリスクがあるという事が分かりますが、日本人女性のほとんどは鉄分不足だと言われています。
▼鉄分に対する価値観がきっと変わると思います。
症状の重さに差があったとしても、「産後うつ」は、日本人女性のほとんどに可能性があると言っても、決して言い過ぎではありません。
「産後うつ」の症状チェック
代表的な産後うつの症状をご紹介します。
どの症状も性格・体質・環境などが原因だと思い、一時的なものだからと自己解決していませんか?自覚症状がなくても、「もしかしたら産後うつの症状かもしれない」と思うくらいがちょうど良いのかもしれません。
- 憂鬱で落ち込みやすい
- 何に対してもやる気が起きない
- 人と会う事がイヤ
- イライラしやすい
- 涙もろい
- 怒りっぽい
- 集中力が無い
- よく眠れない
- 疲れがとれない・全身がだるい
- 頭痛
- めまい
- 動悸
- 自信がない
- 神経質になる
- 育児が負担で仕方が無い
- 育児放棄
- 子どもがかわいく思えない
- 子どもを育てる自信がない
- 子どもや夫に愛情を感じられない
- 死んでしまいたいとさえ感じる
少しでも思い当たる場合は、フェリチン値を測定してもらうことを強くおススメします。
産後うつと貧血の症状は重なっている
貧血とは、酸素を運ぶヘモグロビンが少なくなっている状態のこと。ヘモグロビンの材料は「鉄」と「たんぱく質」なので、不足すると貧血が起こり、これを「鉄欠乏性貧血」といいます。
鉄欠乏性貧血の症状は、酸素不足によるものと、鉄分不足によるもので起こります。
- めまい
- 立ちくらみ
- 動悸がする
- 頭痛がする
- 疲れやすい
- 身体がだるい
- 肩こりがする
- 集中力がない
- イライラする
- 怒りっぽい
- やる気が起きない
これらの症状は、うつ病の症状とも重なっています。鉄分不足は貧血だけでなく、産後うつをも招いてしまうリスクが高いと言えます。
母親が鉄分不足ならその子どもは?
「そのイライラ鉄分不足が原因かも!キレやすい人必見です!!」でもご紹介していますが、鉄分不足ではセロトニンやドーパミン、ノルアドレナリンといった神経伝達物質が作られにくくなりますので、精神(こころ)にさまざまな影響があらわれます。
イライラ・キレやすいなど、人前や公共の場で表す人は少ないと思いますが、家庭の中ではあからさまになってしまうものです。
母親の鉄分不足は子どもの不登校を招くかも
子どもがすぐに返事をしなかったり、宿題をしなかったり、些細なことでイライラして叱りつけた後、「ちょっと言い過ぎた…」などと自分を責めて落ち込んだという経験はありませんか?
家の中がそのような状況だと子どもは萎縮して、おびえながら過ごすようになってしまい、不登校やチックなどの心身症の症状が現れる場合があるそうです。
このようなときは、母親の精神状態を良くすることが先決。鉄分不足を改善することが大切なんです。
子どもが鉄分不足
大人だけでなく子どもにも鉄分不足の症状は現れます。生まれてすぐは、おなかの中でたっぷりの鉄分をもらってきてますので、生後6カ月くらいまで鉄分は豊富にあるそうです。
しかしそれ以降、お母さんが鉄分不足のまま母乳を与えていたり、その他の食事で鉄分が不足している状態が続けば、速いスピードで鉄分は減っていき、フェリチン値も下がっていきます。
子どものこんな症状に要注意
鉄分不足の症状は自覚しにくいものです。大人だってそうなのですから、子どもはもっと自覚しにくいので、親に不調を訴えるという事がされにくいです。
- 子どもなのにイライラしている
- 落ち着きがない
- 攻撃的
- 体重が増えない
- 身長が伸びない
子どもの様子をよく観察して、このような症状がある場合は鉄分不足を疑ってみることも大切です。子どものフェリチン値は100~300で正常だと考えらえています。
女の子で30以下は重度の鉄分不足。男の子は鉄分不足に耐性がないので50以下でも重度で、発達障害などと関係している可能性が高いと言われています。
子どものうちは、鉄分不足を解消するスピードも速いそうです。早めに手が打てるよう、「もしかしたら?」と思ったら、小児科でフェリチン値を測定してもらう事をおススメします。
思春期からは本気で鉄分対策
鉄分不足を予防するために、本気で鉄分の摂取に気をつけないといけないのは、思春期を迎える中学生・高校生くらいからです。
この時期から女性は月経が始まることで、出血により多くの鉄分を失っていきます。さらには、体型を気にしはじめ、ダイエットによる食事制限も加わって、体内の鉄をどんどん消費してしまいます。
鉄分の補給は食事からしか行えません。効果的に摂取できるような工夫が何よりも子どもにとって、鉄分不足のお母さんにとっても大切です。
▼自然な食べ物で鉄分を効率よくとる方法
最後に
「産後うつ」の原因がストレスだと限定するより、鉄分不足、たんぱく質不足も原因であるとすれば、予防や対策方法も幅が広がってきます。
今すぐにストレスを感じないような環境をつくったり、考え方を改めたりすることは難しいかもしれませんが、鉄分不足やタンパク質不足は、毎日の食事を少し工夫するだけで、物理的に改善する事ができるものです。
すぐに効果が現れるわけではありませんが、毎日の積み重ねが必ず実を結びます。
その結果、これまでの症状が和らぎ、結果的にストレスを感じないようになるという良いサイクルに変わる事も期待できます。であれば、先に取り組むべきは鉄分不足、たんぱく質不足の解消だと考えて良いのかもしれません。
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