貧血かどうかを判断するための指標の一つに、「血清鉄」というものがありますが、そもそも血清とは何なのでしょうか?血漿との違いは?それは血液凝固のしくみを知ればよく分かります。
血清について、血液用語辞典では次のように記されています。
血清:血液が凝固したとき、血餅から分離する黄白色で透明な液体のこと。血漿からフィブリノーゲンを除いたもの
引用:「weblio辞書」
このように、血餅(けっぺい)やフィブリノーゲンなど、聞きなれない言葉がいくつか出てきました。
これらの意味を理解するためには、血液が固まる(凝固)のしくみについて知る必要があります。
これから、血液凝固のしくみについて分かりやすくご紹介していきますが、お読みいただくことで、血漿と血清の違いについて完璧に理解することができます。
それではまず、私たちが中学校のときに習った「血液の成分」についておさらいしてみましょう。
血液の成り立ち
「血液は、赤血球、白血球、血小板の3つの固体の成分と、血漿(けっしょう)とよばれる液体の成分があわさったものです。 」
中学校の理科で、血液の成分について学んだかと思います。
それぞれの役割については以下の通りです。
- 赤血球
- 体中を回り、呼吸によって取り込んだ酸素を取り込み、体の隅々まで運ぶ。同時に二酸化炭素の回収もおこなう。
- 白血球
- 病原菌や異物から体を守るための免疫機能(防御作用)を担っている。
- 血漿
- 体中の細胞に栄養やホルモンを運びます。また、老廃物の回収や、細胞内の水分量を調節する働きも担っています。
- 血小板
- 血管がやぶれてしまった時に集合して、その傷口をふさぎ止血してくれます。
このように、血液には私たちが生きていくうえで欠かせない役割があります。
ケガをしたときなど、何らかの原因で血管が破れてしまうと出血しますが、血管が破れると、その箇所の内側に血小板がくっつきます。
血小板は、つぎつぎに他の血小板をくっつけて塊をつくることで、血管の破れをふさぎ出血を止めてくれます。
血清と血漿の違いについて理解するために、止血のしくみをもう1段階掘り下げてみます。
血液の凝固は二段階
出血を止めるための止血機構には、「一次止血」と「二次止血」の二段階があり、血小板が集まってできた血液の塊を「一次血栓」といいます。
しかし一次血栓はとても弱いので、すぐに壊れてしまい、また出血してしまいます。
そこで、一次血栓を補強してしっかりと止血とするために、血小板などの細胞のすき間に「フィブリン」というものが、セメントのように固まります。
その結果、石垣がセメントで固められるように丈夫な塊となります。この塊を二次血栓と呼び、一次血栓と二次血栓をまとめて血栓とも呼びます。
多くの因子が連鎖反応して凝固へ
石垣のすき間を埋めるセメントのような役割をするフィブリン。これができるまでには、凝固因子と呼ばれるたんぱく質、リン脂質、カルシウムイオンなどが連鎖反応して、下記の図のようにはたらきます。
血液をしばらく放置すると、出血したときと同じように止血機序が働きます。(※機序とは、しくみや機構、メカニズムのことをいいます。)
その結果、血液は固まり赤黒い沈殿物と淡黄色の液体との二層に分かれます。
下に溜まった濃い血の成分を血餅(けっぺい)と呼び、上澄みの淡黄色の液体を「血清」と呼びます。(後の図解をご参照ください。)
止血機序が働いた結果できたものが「血餅」ですので、血餅とは、血球成分とフィブリノゲンが固まってできた塊のことです。
また、血漿と血清は液体という点では同じですが、血液を固めるためのフィブリノゲンが含まれるか含まれないかの違いがあります。
つまり、「血清=フィブリノゲンが含まれない」「血漿=フィブリノゲンが含まれる」となります。
血清と血漿の違い(図解)
血清は、血漿から凝固因子(フィブリノゲン)を取り除いた成分なので固まりません。
ですから、血清を採取する場合では、血液に何も加えずに放置し、その上清をとればよいです。
血漿の場合では、抗凝固剤という、血液が固まらないようにする薬品を加えて遠心分離し、上清をとらなければなりません。
血清ではフィブリノゲンや血小板などの濃度が低下します。それは凝固反応で消費されるからです。
血漿は、血液が固まる反応を起こしていない状態の液体なので、「血清」よりも、体内を流れている状態を反映していると考えられます。
血漿と血清の違い~まとめ~
ケガをするとかさぶたができるように、血液をしばらく放置したしたら固まり、赤黒い沈殿物(血餅)と淡黄色の液体(血清)との二層に分かれます。
血液が固まる時には、フィブリノゲンという凝固因子がはたらきます。
つまり、血清とは、血漿からフィブリノゲンを除いたもの。
血清と血漿の違いは、フィブリノゲンが含まれるか含まれないかということになります。
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