急に立ち上がると起こる「頭痛」や「めまい」。最悪の場合そのまま気を失ってしまったり…
このようなときに「貧血がおきた」とよく言われますが、これは「起立性低血圧」と言われる脳貧血の一種。脳へ送られるはずの血液が一時的に不足することで起こるものです。
起立性低血圧を完全に防ぐ事はとても難しいことだと言われていますが…
- 「なぜ起こるのか?」
- 「起こりやすい状況と対処法」
- 「予防につながる日ごろのケア」
これらの事を知ることは、たとえ完全に防ぐことはできなくても、症状を軽くしたり、大事故の回避につながる、とても大切なことです。
ここでご紹介するのは「起こりやすい状況と対処法」という、起立性低血圧の対処法に関する内容です。
「フラ~っとめまいがした時に、そのまま失神してしまいそうで怖い…」という不安の解消に、ぜひお役立てください。
また、原因や予防法についても別の記事でご紹介していますので、合わせてご参照ください。
▼起立性低血圧の原因に関する記事
▼予防につながる根本的なケア
頭痛・めまいが生じた時の基本的な対処法
どんなに気を付けていても、起立性低血圧による脳貧血の症状を100%予防する事は難しいです。
ですから、症状がおきたときの対処法を知っておくことが大切です。
とにかく頭を低く
基本的な対処方法は単純で、頭を低く保つことにつきます。
症状が起きたら、すみやかに横になる事。それができないような状況であれば、しゃがみこむなどして、とにかく頭を低くしましょう。
失神によって気を失い転倒してしまうと、骨折などの大けがにつながりやすいので、我慢して立った状態などを維持しようとせず、できるだけ早く頭が低い状態になるようにしましょう。
起立性低血圧が起こりやすい6つの状況
起立性低血圧は、ある程度おきやすいケースや時間を予測することができます。
起立性低血圧は最悪の場合「失神」にもつながりかねますから、おその状況を理解し注意をすることは、とても効果的な予防法とも言えます。
起立性低血圧による脳貧血の症状(頭痛・めまい・失神など)が起こりやすい代表的なケースは次の6つです。
- 1.急に立ち上がった時
- 急に立ち上がると重力によって下半身に血液が集まります。通常は自律神経が働き、上半身の血液を保つようにしてくれますが、自律神経が乱れるとその反応ができず脳への血液の流れが一時的に少なくなる事で頭痛や立ちくらみ、めまいなどが起こります。
- 2.お風呂から出る時
- お風呂に入っていると、カラダ全体に水圧がかかるので、それを押し戻そうと血圧が高くなります。お風呂からあがるとその水圧がなくなり、カラダは温まって血管は開いた状態になっているので、急速に手足に血液が移動して血圧が低くなります。
- 3.食後
- 食事のあとは、消化活動のためおなかの血流が急速に増えることから血圧が低くなりやすいです。また、血糖値があがると血圧が低くなるという報告もあり、食事をしてからの1~2時間くらいは注意が必要です。
- 4.朝の起き抜け
- 寝ている間は、副交感神経というカラダをやすめる自律神経が働いています。この状態は血圧は低くなっているので、起き抜けには注意が必要です。
- 5.お酒を飲んだ時
- お酒の席では、ただでさえ長い時間、座りっぱなしになるため、起立性低血圧から脳貧血を起こしやすい状況です。さらにお酒で血圧が下がってしまう状況がくわわれば、ひどい症状にみまわれやすくなります。
- 6.排泄時
- 便を出すときにいきむと、血管の収縮による血圧の調節ができにくくなります。さらに、排泄のために座っている時間が長いこともあり。起立性低血圧が起こりやすくなります。
状況ごとの起立性低血圧対策
起立性低血圧による脳貧血の症状が起こりやすい6つのケースをご紹介しました。
それでは最後に、それぞれの対処法を詳しく見ていきましょう。
立ち上がる時の対処法
急に体を起こさない
寝ている状態から座る体制に変更して立ち上がるなどしたり、座っている状態からゆっくり立ち上がるなど、頭の位置が低いところから高いところへ移動するときには、ゆっくりと段階を経て行うようにしましょう。
脚部の筋肉を動かす
脚部の筋肉は、血液をポンプのように動かしてくれています。とくに「ふくらはぎ」は第二の心臓といわれるくらい重要な働きをしています。
もし、座っている状態が長く続くようであれば、足をダランとしておくだけでなく、時々ふくらはぎなどの筋肉を意識して、適度に動かしてみましょう。
しかし、脚部の筋肉を動かすために、スクワットなどの激しい屈伸運動は、かなり大きな頭の上下運動をおこないますので、急激に行うと、頭痛・めまい・失神などのリスクが高まりますので注意が必要です。
脚部を圧迫する
足をギュッと圧迫することで血圧を上げることができます。
収縮するチカラが強いゴムでできた弾性ストッキングや靴下、サポーターなどを使って脚部を圧迫することで、立ち上がる時におこる頭痛やめまい、失神などを予防できます。
この方法は、日本理学療法士協会の学術大会においても、その効果が立証されています。
しかし、ある一定の圧力が加わらない事には効果が見込めませんので、足が細く、なかなかストッキングなどでは圧がかからない場合は注意が必要です。弾性の包帯などを使うと、圧をしっかりかけることができます。
できるだけ体を動かす
起立性低血圧による脳貧血をよく起こす人の中には、失神を警戒するがあまりに、休みの日などはできるだけ動かずにじっとしている、なるべく寝ているといった人も多くいます。
しかし、これは逆効果になってしまう場合も少なくありません。
カラダを動かす回数が少なくなると、血圧を調節する機会も少なくなるので、さらに血圧を調節する能力が弱くなってしまう、「廃用性機能低下」というものを起こしてしまいます。
※廃用性機能低下とは、カラダを動かさない事によって起こる、さまざまな心身の機能低下のことを言います。
失神などによる事故を起こさない事も大切ですが、できる範囲で体を動かし、さらなる機能低下を防ぐことも大切です。
お風呂から出る時の対処法
室温への工夫
まずは室温です。特に冬場など、ほかの部屋と浴室の温度差が大きいほど、血圧を大きく変動させます。なるべく、ほかの部屋と浴室の室温に温度差が少ないよう心がけましょう。
水圧への工夫
次は水圧です。浴槽にお湯をいっぱいにして、肩までしっかりつかるのと、半身浴をするのとでは、カラダにかかる水圧は大きな違いがあります。
起立性低血圧を頻繁におこすようであれば半身浴をおすすめします。
浴槽から出る時の工夫
浴槽から出るときは、体温が大きく変化することに加え、座った状態から立ち上がるという最も脳貧血がおこりやすいです。
ゆっくりと立ち上がり、すぐに外に出るのではなく、一度浴槽の縁に腰をおろし、ひと呼吸おいて上がるようにしましょう。
足に水とお湯を交互につける
血管の調整機能を改善することを目的として、脚部に41℃くらいのお湯と、15℃くらいの冷たい水を交互につけて、血管へ収縮や拡張するための刺激をあたえます。
この方法は、血管の収縮・拡張機能を改善し、体温を上昇させたり、リフレッシュ効果があったり、自律神経をケアする効果が期待されると言われています。
足をつける時間については、さまざまな文献などで幅広く紹介されていますが、北海道大学の「冷え性患者への足部交代浴の有効性と検討」という報告によれば、「水1分」「お湯4分」の4セットにて実験した結果、もっとも冷え性者に効果があったとされています。
食後の対処法
食事のあとのカフェイン
食後にコーヒーなどのカフェイン飲料をとることは、低血圧の改善に効果をあらわす場合もあります。
朝の起き抜け時の対処法
頭を高めに
朝は1日のなかでも最も血圧が下がっているときです。ここでの予防方法は、寝るときには頭を高めにし上半身を斜めにして寝ることです。脳貧血の症状が緩和されると言われています。
朝は余裕をもって
朝起きた時は、とにかく急に起き上がらない事。それにつきます。そのために、朝ギリギリで目を覚ますのは脳貧血の症状がおこるリスクがとても高くなります。できるだけ余裕をもった朝にすることが1番です。
お酒を飲んだ時の対処法
お酒の席では無理をせず
お酒を飲んで顔色が青白くなっているときは血圧が下がっている証拠。急に立ちあがらないよう注意しましょう。
排泄時の対処法
便秘をなくそう
いきみを少なく排便できることが望まれますので、水分や食物繊維をつとめてとるようにし、毎日ラクな排便がえられるようにしたいものです。
女性に多い便秘などの場合でも、便秘薬やサプリメントなどで、できるかぎりの便秘解消に努めることも、脳貧血予防のひとつです。
また、浣腸で大量に排便を行うと、急激に血圧が変化します。病院で浣腸を行うときは、しっかりと、自分は貧血を起こしやすいということを、病院の方へ伝えましょう。
さいごに
ここでは、起立性低血圧が起こりやすい状況と対処法についてご紹介しました。
もし、次のような疑問をお持ちであれば、下記の記事をご確認ください。
▼貧血と脳貧血の違いって??
▼注射でクラ~っとなるのはなぜ??
▼脳貧血を防ぐ食べ物ってあるの??
参考文献
- 「冷え症者への足部交代浴の有効性の検討」日本看護研究学会雑誌 32巻3号
- 「下肢弾性ストッキング強度が起立時の血行動態に及ぼす影響」第51回近畿理学療法学術大会書誌
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