ダイエットや健康維持などを目的として食事制限をすることは、もはや当たり前のようになっています。
これまでの食事制限は、総摂取エネルギーを減らす「カロリー制限」が主流でした。しかし最近では、「体重を落としたいなら糖質制限」とまで言われるように、糖質のみを制限する方法が広く知られるようになってきました。
糖質制限によって良い結果を得られた方もいれば、なかなかご飯や麺類、甘いものの制限ができず、途中であきらめてしまった方も多いかと思います。
糖質制限がうまくいかないのは、もしかすると鉄分をはじめとしたミネラルやビタミンが足りていない事が原因なのかもしれません。
なぜ糖質制限がうまくいかないのか、ここでご紹介することが解決のヒントとなれば幸いです。
カロリー制限と糖質制限との違い
一般的にダイエットと聞くとカロリー制限が思い浮かびますが、糖質を制限するのと、カロリーを制限するのでは全然違います。
カロリーとは、三大栄養素(炭水化物・たんぱく質・脂質)に含まれるエネルギー源です。からだに入れるエネルギーの総量を制限するのがカロリー制限。とくに脂質はカロリーが高いため、中心的に控えます。
いっぽうで糖質制限では、たんぱく質や脂質からエネルギーを確保します。糖質とは、炭水化物から食物繊維を除いたもの。主食のごはんやパン、麺類、おかしや甘いものを控えます。
脂肪がつきやすいのは糖質
糖質よりも脂質のほうが脂肪に変わりやすいと思ってしまいませんか?
じっさいに、体内に入ってた糖質は、エネルギーとしてすぐに利用する必要がない場合、肝臓・筋肉・脂肪組織のいずれかに貯蔵されます。
肝臓・筋肉に貯蔵できる分には限界があり、ここで対応しきれなくなると、脂肪組織が太っていきます。これが、ぽっこりお腹の原因です。
糖質を制限するメリット
糖質を体内に貯蔵する際に働くホルモンを「インスリン」といいます。
エネルギーとして糖質が使われないと血糖値が上がります。血糖値が高いと、さまざまな悪い影響があるため、体内の機能によって、肝臓・筋肉・脂肪組織のいずれかに糖質を蓄えることで血糖値を下げようとします。
つまり、インスリンが働くことで、糖質は脂肪へと変化し体に溜め込まれてしまうというわけです。
糖質制限のメリットは、この「インスリン」の分泌を抑えることから得られます。その結果、血糖が脂肪として蓄えられにくくなり、さらに、もともとついている脂肪が燃焼されやすくなります。
糖質を制限するリスク
糖質制限では、インスリンの分泌を抑えることで、からだの脂肪が燃えやすくなる以外にも、健康面でも大きなメリットがあります。
しかし、極端な糖質制限にはリスクもあります。
「糖質制限をしているから・・」と安心して、脂身の多い肉を食べ過ぎると、血中に中性脂肪や悪玉コレステロールが増加し、動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞を招きかねないとされています
そのため、極端な糖質制限ダイエットについて、否定的な声があるのも事実です。大切なのはバランス。糖質を摂らないからといって、栄養の偏りが招くリスクには注意が必要です。
糖質が不足すると頭が働かない?
本来、糖質は脳や筋肉の貴重なエネルギー源ですから、制限することで、エネルギー不足になり、頭が働かなくなったり、運動能力が低下すると思ってしまいがちです。
しかし、どちらがエネルギーをより生み出すのかと言うと、それは脂質に含まれる脂肪酸です。脂肪酸の種類によっても違いますが、パルミチン酸という脂肪酸では、糖質の3倍以上のエネルギーを生み出します。
しかし、脂肪酸は分子が大きいため、脳の血液関門を通ることがでず、脳では脂肪酸を使うことができません。
糖質制限では脳のエネルギー不足になりにくい!?
しかし、糖質をとらなくても、脳のエネルギーが不足しないようにするメカニズムがあります。つまり、糖質制限をしても、脳のエネルギー不足にはなりにくいのです。
グルコースが枯渇している場合には、肝臓では脂肪酸からできたアセチルCoAの一部はケトン体の合成にも振り分けられます。ケトン体であれば血液関門を通過することができますので、グルコースがない場合にもケトン体は脳のエネルギーとなることができますし、また赤血球や肝臓以外のすべてのエネルギーとなることができます。
引用:「うつ・パニックは「鉄」不足が原因だった」藤川徳美著 光文社新書
糖質制限で大切なこと
ここまでに、糖質制限のメリットとリスクについてご紹介してきました。糖質制限では、グルコースから得られるエネルギーが少なくなるため、脂質の構成成分である脂肪酸からのエネルギー産生がメインになります。
糖質を摂りすぎると、余分な糖質は体内に蓄積され、皮下脂肪が増える原因となりますが、脂肪酸を摂りすぎると、コレステロールなどとして体内に蓄積され、高血圧や動脈硬化の進行を早める原因ともなります。
そのため、脂肪酸をしっかり燃焼させること。つまり、脂肪酸をしっかりエネルギーへと変換させることが大切なんです。そのためには、鉄分をはじめとしたミネラルやビタミンが必須なんです。
エネルギー代謝の流れ
私たちがエネルギーとして直接利用できる物質を ATP(アデノシン三リン酸)と言います。エネルギー代謝の目的は、必要に応じてこのATPを作り出すことです。
それでは、脂質がATPへと変わる流れをかんたんにご紹介します。
脂質が消化吸収を経て分解されたものの一つに脂肪酸というものがあります。脂肪酸は直接、細胞内のミトコンドリアへと入り、クエン酸回路(TCA回路)、電子伝達系というエネルギーを発生させる機関を経てATPをつくります。
▼エネルギー代謝について詳しくは下記の記事にてご紹介しています。
糖質制限に鉄分・ビタミンは必須です。
脂肪酸をメインとしたエネルギー代謝をおこなうためには、クエン酸回路、電子電鉄系といった機能をうまく回すことが大切です。
そのためには、鉄分をはじめとしたミネラル、ビタミンB群が必須です。これらが不足している状態だと、うまくクエン酸回路が回りませんし、電子伝達系においては、多くの鉄分が電子の受け渡しを行っているため、結果的に脂肪酸がATPに変換されなくなってしまいます。
女性が続かない理由は鉄分不足
糖質制限は、男性よりも女性は不向きだと言われています。
女性の場合、ほとんどの人が、月経・妊娠・出産などによって、鉄分・ビタミンB・マグネシウムが不足している状態だからです。
そうなると、糖質制限をしても、鉄分不足によって電子伝達系が働かなくなり、脂肪酸などの栄養を利用できない状態になってしまい、エネルギー不足になってしまいます。
たんぱく質も大切
また、脂質を消化吸収するためには、リパーゼというたんぱく質が必要です。たんぱく質が不足してしまうと、結果的に脂質をうまく吸収できずに、やはりATP不足(エネルギー不足)となってしまいます。
理想的な糖質制限の方法とは?
糖質制限がうまくいかない理由は、エネルギー代謝に必須な鉄分・ビタミン・たんぱく質・脂質をバランスよくしっかりと摂取せずに、ただ糖質だけを減らしてしまうことです。
とくに女性がうまく糖質制限を進めるためには、最初から糖質を無理して減らすことよりも、まずは肉・魚・たまご・チーズなどをしっかり食べ、たんぱく質と脂質をバランスよくしっかりと摂ること。
「とにかく糖質を制限する」というイメージで始めるより、「まずは、脂質の吸収をよくするため、たんぱく質を積極的に摂る」といいうイメージではじめた方がうまくいくのかもしれません。
そして、とくに大切なのは鉄分を積極的に摂ること。フェリチン値(体内に貯蔵された鉄の指標)が上がってくると、エネルギー代謝の効率がよくなり、元気になっていくとされています。
さいごに
「女性の80%は鉄分不足!貧血だけじゃなく、うつ病・パニック障害も招く!?」でもご紹介していますが鉄分は日本人女性でとくに不足しやすい栄養素。
糖質制限は、男性に比べ女性のほうがうまくいかないといった事も言われていますが、その理由は、女性の方が鉄分などが不足しやすいという点からも一致します。
糖質を制限すると体がきつくてしかたない。どうしても糖質を制限できない場合は、体内の鉄分に着目してみてはどうでしょうか?
思わぬ結果が得られるかもしれません。
▼鉄分、ビタミンCが豊富にとれるスーパーフルーツ
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