日本貧血改善協会

貧血の予防に鉄分を毎日コツコツとらなきゃダメな理由。

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鉄分は私たちが健康を維持するために、欠かすことはできません。

通常では、食べ物の中にふくまれる鉄が、おもに腸から吸収されることでカラダの中に入ってきます。食事の内容は毎日ちがいますから、1日に入ってくる鉄の量はバラつきがあって当然ですね。

ここでは、体の中の鉄分がどのように失われるのか、なぜ不足してしまうのかについて解説し、どれくらいの人が鉄分不足なのか、厚生省の栄養調査結果をもとにご紹介しています。

この記事を読めば、鉄分を毎日コツコツとることがいかに大切か、必ずお分かりいただけると思います。食事は毎日のこと。少しだけ鉄分を意識するだけで、人生が変わるくらい大きな効果があるかもしれません。

体の中の鉄分は毎日失われている

鉄分は、大人の場合で約3~5gが体の内に存在しています。そのうち70%は、血液(赤血球のヘモグロビン)や筋肉(ミオグロビン)などに存在します。残りの30%は、肝臓や骨髄、筋肉などに貯蔵鉄としてストックされています。

赤血球には寿命があり、約120日たつとこわされ、また新しくつくられています。鉄分は、新しく赤血球がつくられるときの材料。そのため毎日かならず失われているのです。

失われる鉄の量はわずか1mg

1日に代謝によって失われる鉄分の量は約1mg。汗や尿、便などによって生理的に約1mgがカラダの外へ出ていきます。

「たったの1mg!?」そう思いませんか?

寿命をむかえた赤血球は鉄とタンパク質にわかれ、血液をつくる際に、鉄のほとんどはリサイクルされます。だからロスがとっても少ないのです。

なぜ鉄分が不足するの?

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現在、日本人の鉄分不足は深刻な問題です。

ある調査によると20歳から50歳までの女性のうち、約80%が鉄分不足であると言われています。

毎日、外に出ていく鉄の量はたったの1mgなのになぜ? その理由について見ていきましょう。

鉄は吸収率が低い栄養素

例えば10mgの鉄分をふくんだ食べ物を完食したとします。その10mgがすべて吸収されるわけではありません。その吸収率は栄養素によってちがいますが、なかでも鉄分は吸収率がとても低く、約10%しか吸収されません。

▼鉄分の吸収率はヘム鉄と非ヘム鉄によって違います。

鉄が外に出ていく量と、その吸収率を考慮して、厚生労働省では、日本人が1日の食事からとるべき、鉄分の推奨量を発表しています。

 鉄の推奨量
大人の男性 7.5 mg/日
月経のある女性 11.0 mg/日
月経のない女性 6.5 mg/日

妊娠の初期で+2.5mg
妊娠の中・後期では+15.0mg
授乳期では+2.5mg

参考:厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2015 年版)

これだけの鉄分を毎日とらないと、鉄分不足になりますよ!と言っているようなものです。

▼食べ物に含まれる鉄分の一覧

月経によって失われる鉄

さらに女性の場合は、月経によって定期的な出血があります。どんなに頑張ってバランスの良い食事に気をつけても、月経のたびに多くの鉄が失われます。

男性や、月経のない女性とくらべると、1日あたりに換算してさらに約0.5mgの鉄が失われていると言われています。

そのため、鉄分の推奨量も多いので、とくに女性は積極的に鉄分を補う必要があります。

実際にとれている鉄分の量

どれくらいの量の鉄分をとれば良いのかは分かりましたが、実際に私たちの食生活では、どれくらいの量の鉄分がとれているのでしょうか?

それは、厚生労働省の国民栄養調査によって明らかになっています。

年齢階級 鉄の摂取量(mg)
1-6歳 4.2
7-14歳 6.5
15-19歳 7.8
20-29歳 7.1
30-39歳 7.0
40-49歳 7.1
50-59歳 7.8
60-69歳 8.5
70歳以上 8.3

(1歳以上、男女合計)
参考:厚生労働省平成 27 年国民栄養調査

わずか1mgを補うのも大変

このように、成人の男性については、推奨量とほぼ同じくらいの鉄分がとれているようですが、月経のある女性の場合、圧倒的に足りていません。

この数字から分かることは、毎日失われる、たった1mgの鉄を食事で補うことが、いかに大変かということです。

1日3食、できるだけ鉄分を吸収するような食事に気をつけてやっと、外に出ていく鉄の量と同じくらいの鉄を吸収することができるとも言えます。

すぐ貧血にならないのは貯蔵鉄のおかげ

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鉄分不足と聞くと、まっ先に思い浮かぶのは「貧血」ではありませんか?

貧血とは、血液中のヘモグロビンが基準値を下回ることと定義されています。

ヘモグロビンには酸素を運ぶという重要な役割がありますから、これが不足してしまっては大変。そうならないよう、ヘモグロビンの材料となる鉄分は常にストックされています。

このストックされた鉄のことを貯蔵鉄といいます。

鉄分が不足すると貯蔵鉄が使われる

本来であれば、毎日そとに出ていく1mgの鉄分は、食べものによって毎日おぎなう事がベストです。しかし、ご紹介してきたように、多くの場合でそれができていません。

鉄分がたりないときは、貯蔵鉄から鉄を切りくずして、血液をつくっています。

貯蔵鉄が消費されている間は、ヘモグロビンなどは一定に保たれているので、この間は貧血にはなりません。逆に言うと、貧血と診断されたときはもうすでに鉄のストックはからっぽだということです。

貧血と診断されていなくても、この貯蔵鉄を切りくずしていっている状態を「隠れ貧血」ともいいます。

鉄分不足かどうかは、血清フェリチンというタンパク質の濃度を調べればわかります。

血清フェリチンとは、血液の中に含まれており、鉄をためることができるタンパク質。鉄分が少ないためにひき起こされる鉄欠乏性貧血のときに検査をすると、基準の量より減少する。

引用:「健康用語辞典|healthクリック」

しかしこの検査は、日本の健康保険では認められていないこともあり、一般の血液検査ではしらべないことも多いです。そのため、実際には鉄分不足であっても、それが見逃されてしまっているケースも多いとされています。

女性の80%は鉄分不足

厚生労働省の国民栄養調査より、年齢ごとのフェリチンの値が発表されています。これによって、どれくらいの人が鉄分不足なのかを知ることができます。

日本人女性(20歳から49歳まで)のフェリチン値

  • フェリチン値 1ng/mlは、貯蔵鉄8~10mgに相当します
 フェリチン値 20-29歳
(%)
30-39歳
(%)
40-49歳
(%)
5ng/ml未満 11.4 16.8 19.1
5-10 12.1 15.9 16.6
10-30 43.4 38.8 34.4
30-50 17.1 19.0 14.9
50-100 20.8 8.2 16.9
100以上 0 0.3 1.9

日本人女性(50歳以上)のフェリチン値

 フェリチン値 50-59歳
(%)
60-69歳
(%)
70歳以上
(%)
5ng/ml未満 3.9 0.6 1.0
5-10 5.1 1.8 5.2
10-30 15.8 9.1 19.7
30-50 20.6 18.6 19.0
50-100 35.9 41.6 32.7
100以上 18.6 28.3 24.6

参考:厚生労働省 身体状況調査の結果

フェリチン30以下は鉄分不足といわれてます。つまり、20歳から59歳までの日本人女性、約80%は鉄分不足であるといえます。

また、閉経を迎える50代ころから、フェリチン値が大きく上がることからも、月経が鉄分不足に大きく関係していることがわかります。

鉄分を毎日とる理由

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鉄分は毎日かならず失われますから、それを毎日補い続けないといけません。鉄分をとることがかんたんなら、鉄分をとるよう意識する必要はないかもしれませんが実際はどうでしょうか?

これまでの内容で、鉄分がいかに私たちにとって不足している栄養素かがお分かりいただけたと思います。

貯蔵鉄というストックがあるおかげで、すぐには貧血の症状はおこりませんが、鉄分が不足する事による症状は、知らず知らずのうちに起きているものです。

  • 体がだるい
  • 疲れやすい
  • 疲れがとれにくい
  • ぼーっとする
  • やる気が起きない
  • 集中力がない
  • 怒りっぽい
  • イライラする
  • キレやすい
  • 落ち込みやすい
  • 緊張しやすい
  • ストレスがたまりやすい

これら全部、年齢せいや、忙しさのせい、体質のせいにしていませんでしたか?

ほんの1例ではありますが、これは、鉄分が不足することで起きやすい症状です。さらに、鉄分不足はコラーゲンの生成を低下させ、くすみ・しわ・たるみなどのお肌の老化、エネルギー代謝の低下を招きます。

もしこれらの症状がなくなり、イキイキとした毎日を過ごせるのなら、鉄分不足を解消するという事は、私たちの生活のなかでとても有意義なことだと思いませんか?

鉄分がたりていない食生活にもっと危機感をもち、ぜひ毎日欠かすことなく。積極的に鉄分を補給するように意識することは、本来は欠かすことのできない事だと思います。

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