67年前と比較すると、現在の日本人の鉄分摂取量は約6分の1にまで減っています。
- 7歳以上、男女合計の鉄分摂取量
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- 1950年:1日1りあたり約46mg
- 2017年:1日1人あたり約7.5mg
参考:厚生労働省国民栄養調査
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鉄分が不足する原因はさまざま。とくに女性は鉄分が不足しやすく、月経による定期的な出血や、過度なダイエット、偏食などがその原因だといわれています。
しかし、鉄分不足の根本的な原因として、私たちの食生活そのものから鉄分が失われつつあることも見過ごすことはできません。
なぜそのようになってきたのか、ここでは代表的な4つの原因についてご紹介します。
鉄分不足をお金に例えて…
鉄分は毎日失われるため、食べものから毎日補っていかなければなりません。以下の3項目を前提として、鉄の出入りを「お金」に例えてみましょう。
- 毎日失われるヘモグロビンを「財布の中のお金」
- 鉄の貯えであるフェリチンを「貯金」
- 食べ物から得る鉄分を「収入」
鉄分が十分に足りているのか? つまり家の家計については、財布の中のお金(ヘモグロビン)が多い少ないかではなく、貯金額(フェリチン)まで含めないと把握することはできません。
もし貯金が少なければ、ギリギリの状態でお金を回しているのと同じこと。今月はなんとかやりくりできたけど、できないときは貯金を切り崩して生活しています。
貯金がなくなる=貧血
そして貯金が底をついたとき、それが貧血になる時です。フェリチンが空っぽになれば、血液中の鉄分を使うしかありません。そうなればヘモグロビンはうまく作られなくなり、その結果、貧血となるわけです。
多くの場合、貯金は徐々に無くなっていくため、その危機感(つまり鉄分不足の症状)になれてしまい、鉄分不足と自覚していない人も多いそうです。
家計の見直しが必要かも?
昨日は鉄分が足りていたけど、今日は足りなかったので貯金をおろした。このような生活では貧血になるのも時間の問題。貧血にはならなくても、鉄分不足による症状は必ずあるはずです。
家計を安定させる、つまり鉄分不足を解消するには、収入(鉄の摂取量)を上げていかなければいけません。収入を上げるには
- 食事で効率よく鉄分を摂る
- サプリメントなどを使用する
- 鉄剤を使用する
これら3つが一般的な方法です。
なぜ鉄分不足が多いの?
欧米ではフェリチン値40以下の女性は出産が許可されないと、別の記事でご紹介しました。
その理由は、鉄分の重要性を認識しているため、鉄分不足では妊娠や出産に耐えられないとみなされるからです。
フェリチン値40でも日本では基準値内です。しかし、世界的な基準からいけば明らかな鉄分不足です。
鉄分不足は欧米の女性には少なく、日本特有の現象とも言われていますが、その原因は当然ながら食生活にあります。
日本と欧米の食生活の違い
まずは、鉄分の大きな供給源である肉の消費量が圧倒的に違います。欧米では、日本人の約3倍もの肉を食べるそうです。
肉食が主体の欧米ではベジタリアン以外、鉄分不足にはなりにくいのです。それとは逆に、日本人よりも魚介類の摂取量が少ないので、亜鉛やマグネシウムが不足しやすいそうです。
遅れている鉄対策
1940年、欧米ではでは鉄欠乏性貧血が多く発症し、その対応として小麦粉に鉄をいれるようにしました。これにより鉄分不足は減少したそうです。
現在では、アメリカ・イギリス・カナダ・スリランカ・タイ・トルコなどでも同じ対策がとられています。また、小麦粉に限らず、メキシコではトウモロコシ粉、モロッコでは塩、フィリピンでは米、中国ではしょう油に鉄が入っています。
しかし日本ではこうした対策は取られていません。
鉄分が生活から失われつつある4つの原因
現在、私たちの生活の中で、急速に鉄が失われつつあります。昔と比べ、こんなにも鉄分の摂取量が減ってしまった原因は何でしょうか。
たくさんの原因がありますが、その中でも代表的なもの4つをご紹介します。
①加工食品が増えた
加工食品になると、素材の時点では含まれていた栄養素がかなり少なくなります。肉は冷凍する事でビタミンが少なくなります。穀類は精製されることでマグネシウム・亜鉛・鉄といったミネラルも減ります。
②食材の変化
レバーを食べる機会が少なくなってきています。妊娠初期のレバー摂取はおなかの赤ちゃんに悪影響があるとして控えるように言われたり、生レバーが禁止になったりと、全般的にレバー=危険という認識が与えられているのかもしれません。
また、鉄分・タンパク質が豊富なクジラ肉も食べなくなりました。ラム肉なども豊富ですが、北海道をのぞき、あまりなじみがありません。
さらに、野菜をみても今と昔とでは栄養価が違うとされています。ホウレンソウに含まれる鉄分が、1950年では13mg/100gだったのに対し、2000年には2.0mg/100gに減っているのは有名な話です。
③調理器具の変化
鉄分が多くとれるメニューとして有名な「ひじき煮」も、昔の9分の1まで減っています。昔は鉄なべで煮ていたのが、便利なステンレス製に変わったことが原因のようです。
ひじきに含まれる鉄分ではなくて、調理器具であるおなべの鉄分がメインだったのです。ちなみに、切り干し大根も3分の1に減ったそうですが、これも鉄の包丁を使わなくなったことが原因だと言われています。
昔の調理器具は鉄がメインだったため、何の料理でも少しずつ溶けだしていた鉄分を摂取できていましたが、今ではそれが期待できません。
④鉄過剰症のリスク
日本の医学教育は、欧米から取り入れた考え方が基本のため、日本人女性の栄養状態が鉄分不足であるという前提が共有されていないそうです。
反対に、鉄のとりすぎからくる「鉄過剰症」のリスクを教えられているので、鉄=危険という考え方が刷り込まれてしまっているとも言われています。
さいごに
私たちの体内にある鉄は食べ物からしか入ってきません。貯蔵鉄が空っぽになり貧血と診断された場合は、鉄剤によって鉄分を補充していきますが、鉄分不足解消の基本は食事です。
まずは、これまでの食生活を続けていれば、かなりの確率で鉄分が不足するということを強く自覚すること。そして、その食生活を改善すれば、自分の生活がどう変わるのかを想像してみることが大切です。
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