近年、日本では健康志向が高まっています。
2017年の「国民健康・栄養調査」によると、「運動習慣のある者」の割合は男性37.8%、女性27.3%です。
(※「運動習慣のある者」とは、1回30分以上の運動を週2回以上実施し1年以上継続している者。)
これは2003年の調査と比較すると、男性は8.5%、女性は3.2%も上がっています。
しかし、スポーツをしている人に貧血が多いという事をご存知ですか?
なぜそのような事になるのか、ここでは、「スポーツ貧血」の原因についてご紹介いたします。
部活を頑張っている子をもつ方や、日常的にはげしい運動をされる方なあどは是非ご一読ください。
スポーツ貧血とは?
スポーツ貧血とは、激しい運動をすることが原因で起きる貧血です。
運動部に所属する学生や、スポーツチームに所属している社会人、プロスポーツ選手など、日常的に激しい運動をするアスリートは、一般人よりも多くの貧血が見られます。
ではなぜ、激しい運動をする人は貧血が起こりやすいのでしょうか?
その代表的な3つに原因について見ていきましょう。
1つ目の原因「鉄分不足」
スポーツ貧血の原因として第一に考えられるのは、「鉄分不足」です。
ヘモグロビンをつくるために欠かすことのできない鉄分を、食事から十分摂取できないと、鉄分は不足してしまいます。
また、女性特有の月経や、出血を伴う病気によって鉄分を失い過ぎたりすれば貧血になってしまします。
これは一般的な貧血の原因ですが、スポーツ貧血の場合、一般の貧血と比較して特徴的な点があります。
それは、スポーツ貧血を起こす人の筋肉量です。
筋肉量と鉄分の関係
鹿屋体育大学院体育学部の研究者による報告では、体育大学生女子スポーツ選手と、一般女子大生とを比較して、筋肉量が約25%多いとされています。
筋肉には、ミオグロビンというたんぱく質が含まれています。
▼ミオグロビンに関する記事
ミオグロビンの中心には鉄が存在し、その鉄が酸素と結びつき酸素を筋肉に貯蔵してくれます。
ヘモグロビンによって運ばれてきた酸素を受け取り、必要となるときまで筋肉の中に蓄えているんです。
つまり、筋肉が多いと言うことは、それだけ鉄分が必要だということになります。
ですから、筋肉量が多い運動選手こそ、食事から十分に鉄分を摂取しなければ、簡単に貧血になってしまうのです。
2つめの原因「発汗」
スポーツ貧血の原因2つ目。
それは「発汗」です。
じつは汗にも鉄分が含まれています。
私達が1日に失う鉄分の量は約1mgです。
おもに汗や尿などによって失われています。
▼体内の鉄分について
汗は、皮膚にある汗腺から出ますが、汗腺には、汗に含まれる鉄分などのミネラルなどをろ過し、身体の中に再吸収させる働きがあります。
そのため、鉄分の喪失は最小限にくい止められていますが、スポーツによる急激な発汗では、汗を再吸収する仕組みが追いつかず、汗とともに体内から鉄が失われてしまいます。
ですから、大量の汗をかくスポーツ選手は貧血になりやすいのです。
3つ目の原因「衝撃」
最後にご紹介するスポーツ貧血の原因は「衝撃」です。
サッカー、バスケットボール、バレーボール、マラソンなど、足の裏に衝撃がかかるスポーツや、剣道など体に衝撃がかかるスポーツでは、その衝撃を受けた部分で血液中の赤血球が破壊されてしまいます。
破壊されたヘモグロビンは腎臓で再吸収されるので、血尿が出ることはなく、鉄分もなくなりません。
しかし、たくさんの赤血球が破壊され続ければ、腎臓で処理できなかったヘモグロビンが尿に混じり、血尿が生じてしまいます。
多くの場合、運動を控えるだけで改善し、重症化するケースは稀だと言われています。
しかし、血尿が出るほどの運動を続けていれば、スポーツ貧血を悪化させる原因となってしまいます。
スポーツ貧血の原因 ~まとめ~
「スポーツをしている人は鉄分が不足しやすい」という事は、スポーツ貧血の代表的な3つの原因を見ても明らかです。
- 食事での鉄分補給が不足
- 発汗による鉄喪失
- 衝撃による赤血球破壊
健康増進において運動も大切ですが、積極的な鉄分補給を心がけることを忘れてはならないと思います。
▼鉄分を食事で効果的に補うために大切なこと
参考文献
- 「貧血大国日本」山本佳奈著 光文社新書
- 「体育大学生女子スポーツ選手における種目別の骨密度と身体組成についての調査研究」鹿屋体育大学大学院体育学部
- 「運動と発汗」小川徳雄
- 「平成27年国民健康・栄養調査結果の概要」厚生労働省
この記事が気に入ったら
いいね!しよう