「脳貧血」と「貧血」。
同じ貧血という言葉を使ってありますが、これらは厳密に言うと別のものです。
ここでは、その違いと原因について詳しく解説しています。
- 急に起き上がると頭痛や立ちくらみ
- 朝礼で立っていたら冷や汗が出てきてめまいがする。ついにはバタンと倒れてしまう
- 電車の中で目の前が真っ白になり血の気が引くような感じがした。
- お酒の席で気を失ったことがある
このような経験がある人や、まわりにこにような人がいる方は多いのではないでしょうか?
これらの多くは脳貧血の症状です。
脳貧血の原因を知る大切さ
倒れるまではいかなくても、血のけがひいたり、急にフラッとなってしゃがみこんだり、何が原因なのか分からなくて不安になりますね。
万が一、気を失って倒れてしまったら、体をささえることができないので、多くの場合は頭から落ちてしまい、大けがにつながってしまいます。
また、倒れた先が車が多く通る道路だったり、最悪、駅のホームだったり、考えただけでもゾっとしますね。
もし、頻繁に起こるようであれば、重大な病気が潜んでいる可能性だってありますから、原因を特定するために、しっかり検査をしてもらう必要があります。
何よりも大切なことは、
「あっ ヤバイ! 倒れそうかも・・」
といった、立ちくらみやめまいなどを起こした時の対処方法や、そうならないための予防方法を知ることです。
そのためには脳貧血の原因について、しっかりと理解をする必要があります。
脳貧血の原因を理解し、自分に置きかえてみて初めて、効果的な予防や対策の方法は見えてくるものです。
この記事は脳貧血の原因についてご紹介しています。対処法については以下の記事をご参照ください。
それではまず、脳貧血と貧血の原因の違いについて見ていきましょう。
脳貧血とは?
「貧血」と「脳貧血」は厳密に言えば別のものです。
でも、どちらの症状も、酸素が不足することによって症状を招くというところでは同じです。
貧血でも脳の酸素が不足することはありますので、めまいや立ちくらみが起きた時に、「貧血でフラついた」と言うことは決して間違っていません。
しかし、脳の酸素が不足する原因が、「貧血」と「脳貧血」では全く違うのです。
ことなる原因
「脳貧血」とは、一時的に血圧が下がることで、脳へ送る血液の量が下がり、脳が酸欠状態になることで、立ちくらみやめまい、ひどい場合は失神などの症状を起こすことを言います。
「貧血」は血圧とは全く関係ありません。
貧血とは、血液の中の赤血球が少なくヘモグロビンの濃度が低い状態です。
ヘモグロビンには酸素を運ぶという重要な役割がありますから、少なくなる事で酸素を運ぶ能力が下がり、体中で酸欠状態を引き起こしてしまいます。
▼貧血とは?
ようするに、酸素を運ぶ血液それ自体に問題があるのか、血液を循環させる血圧に問題があるのかの違いです。
赤血球の数が正常で、血液には何の問題がない人であっても、脳貧血を起こす可能性は考えられます。
日常生活で脳貧血と貧血とを使い分ける必要性はないのかもしれません。
しかし、めまいや立ちくらみといった症状を予防・改善するためには、その原因を把握する必要があります。
脳貧血の症状
脳貧血の症状のもとになるのは脳の酸欠によるものです。
また、貧血が原因での症状は、進行がゆっくりな場合が多いため、症状を自覚しにくいと言われています。
しかし、脳貧血は、急に、脳が酸欠状態になることが多いため、症状が明らかな場合がほとんどです。
脳貧血の症状一覧
- めまい
- 立ちくらみ
- 体が浮くような感じ
- 血のけがひくような感じ
- 頭痛
- 寒気
- 吐き気
- 耳鳴り
- 顔色が悪くなる(顔面蒼白)
- 冷や汗をかく
- 手足が冷たくなる
- 寝起きが悪くなる
- 乗り物に酔いやすい
- 失神
- けいれん
血液が薄い状態の貧血では、徐々に進行していくので自覚症状が無い場合がほとんどです。
脳貧血は急な血圧の低下によって起こるため、すぐにその症状がでますし、ひどい場合は失神して倒れてしまうということもあります。
脳貧血が起こるケース
ご紹介したような脳貧血の症状が起こる代表的なケースをご紹介します。
- 急に立ち上がる
- お酒の席でトイレなどに立った時
これらを「起立性低血圧」といいます。
- 朝礼や電車の中など長い時間たったまま
- 献血や健康診断などの採血のとき
- ケガをしたときの出血
- 激しい痛みを感じたとき
これらを「血管迷走神経反射」といいます。
このようなケースでは、私たちのカラダで何がおこっているのでしょうか?
多くの場合、一時的なものであって、しゃがんで頭を下げる姿勢をとったり、 足を高くして横になり安静にすることで回復します。
でも、なかなか症状が回復しなかったり、頻繁にこれっらが起こる場合は、しっかりと検査をして、原因をはっきりしてもらう事を強くお勧めします。
また、一度でも、気を失うほどの重い症状にみまわれた場合は、脳の病気が原因の可能性もありますから、必ず検査をしてもらいましょう。
脳貧血の原因はおもに7つ!
繰り返しますが、脳貧血は一時的に血圧が低くなり、脳へ運ばれる酸素が少なくなることで起こります。
引き起こすケースはさまざまで、気を失うまではいかなくても、少し目の前がフワ~っとするくらいのことなら経験がある人が多いのではないでしょうか?
その「フワ~っと」「クラ~っと」の時は、一時的に血圧が下がっている状態です。
なぜ下がってしまうのでしょうか? その原因を見ていきましょう。
フワフワ、クラクラの原因を知るためには、血圧が何によって調節されているのかを知る必要があります。
血圧は、腎臓や神経(中枢神経や自律神経)、内分泌系(腎臓や副腎などのホルモン)、血管内皮細胞からの血管収縮、もしくは拡張を進める物質など、多くの因子によって調節されています。
このように、血圧を調節しているものはたくさんありますが、この中でとくに原因として考えられているのは次の7つです。
- 自律神経の乱れ
- ホルモンバランスが崩れる
- 脱水による低血圧
- もともとの血圧が低い
- お酒(アルコール)の影響
- 成長期
- 何らかの病気
それでは、それぞれの原因について詳しく見ていきましょう。
自律神経の乱れ
自律神経ってなに?
自律神経とは、体温を調節したり、栄養を吸収したり、血液を流したりなど、無意識のうちにおこるすべての運動をコントロールしている神経の事です。
自律神経は「交感神経」と「副交感神経」という2つから成っています。言葉だけは、聞かれたことがある人も多いのではないでしょうか?
交感神経は心身を活発にする神経
ストレスを感じた時や緊急の時などに働き、心臓や肺の動きを元気にします。このときは、血管はギュッと収縮していて、血圧は高い状態です。
- 交感神経が働くときの例
- 緊張している時・興奮している時・ストレスを感じている時など
副交感神経は心身を休ませる神経
胃腸などの消化器官の働きを活発にさせたり、傷や疲れなどの回復を促進させます。このときは筋肉はゆるんでいるので、血管はゆるんでいて、血圧は低い状態です。
- 副交感神経が働くときの例
- 睡眠時・休息している時・リラックスしている時など
自律神経の乱れと血圧の関係
ふだんの生活のなかで、全身に酸素を届けるために、血圧は絶えず変化しています。立っている時、座っている時、眠っている時、ストレスを感じている時、リラックスしている時など。
自律神経が働いてくれているおかげで、血圧の調整をおこない、酸素が不足しないようにしてくれているはずなのですが、自律神経が乱れてしまうと、その調節がうまくできなくなってしまいます。
そうなると、脳へ運ばれるはずの血液の量が少なくなってしまい、脳貧血の症状が起こりやすくなってしまうのです。
自律神経が乱れる原因
では一体なぜ、自律神経が上手く働かなくなってしまうのでしょうか?
その原因はさまざまですが、ここでご紹介するのは代表的な次の3つです
- ストレス
- 睡眠不足
- 鉄分不足
1.ストレス
自律神経が乱れる1番の原因はストレスです。人間関係・プレッシャー・疲労・ケガ・病気など、精神的にも肉体的にも、ふだんの生活の中では、さまざまなストレスを受けます。
そのストレスが大きすぎると、交感神経と副交感神経のバランスが崩れてしまい、血圧の調整がうまくおこなわれずに、その結果として一時的な低血圧症となってしまうことがあります。
▼ストレスの対処法
2.睡眠不足
私たちのカラダは、一定の生態リズムによって動いていますが、寝不足が続いたり、昼と夜が逆転した生活が続いていたりすると、自律神経が乱れてしまいます。
寝不足が続くと、カラダを休めるための副交感神経が働かなくなってしまい、夜になっても交感神経が優位で疲れが取れなくなってしまい、自律神経が乱れやすくなってしまいます。
3.鉄分不足
自律神経失調症の症状と、鉄分不足の症状は重なります。最近では、鉄分不足は貧血だけでなく、私たちの精神(こころ)にも大きな影響を与えると言われています。
その理由は、鉄分が不足すると、神経伝達物質(ドーパミン・ノルアドレナリン・セロトニン)の生産が減少するからです。
▼鉄分不足の対処法
ホルモンバランスが崩れる
ホルモンバランスとは?
ホルモンとは、そのバランスをたもつことにより、自律神経と影響しあって、からだのさまざまな働きを調節してくれる物質です。
血圧を調節するためのホルモンや、赤血球をつくるように刺激を与えるもの、そのほか、眠っているからだを起こしたり、興奮させたり、活力を与えたりしてくれるほか、からだの働きを抑制する役割もあります。
現在確認されているだけでも100種類以上あり、さらに発見され続けています。
ホルモンは、「刺激する」「呼び覚ます」を意味する「ホルマオ」というギリシャ語が語源だそうです。
ホルモンバランスと自律神経はセット?
ホルモンと自律神経は、どちらも同じ大脳の視床下部というところでコントロールされてます。
どちらか片方が乱れると、もう片方もその影響を受けやすいと言われています。
そのため、ホルモンのバランスがくずれると、自律神経のバランスもくずれてしまい、正常な血圧の調節ができなくなってしまいます。もちろんその反対もあり、自律神経が乱れると、ホルモンバランスもくずれやすくなってしまいます。
ホルモンバランスがくずれやすい人
女性
女性は男性に比べ、ホルモンバランスが大変乱れやすいと言われています。生理、出産、閉経など様々な場面でホルモンバランスがくずれやすいです。さらに、女性は男性よりも心臓のチカラが弱くできているので、低血圧になりやすいとも言われていて、脳貧血をおこしやすいと言われています。
妊婦
とくに妊娠後期では、ホルモンバランスが大きくくずれやすいとされ、脳貧血に悩んでいる人も多くいるそうです。気をつけたいのは、クラクラ、フワフワの原因が「貧血」か「脳貧血」のどちらかをハッキリさせることです。
貧血は全くないのに、鉄分のサプリメントなどでクラクラ対策をしようとしても、まったく改善されないどころか、鉄分の過剰摂取でおなかの赤ちゃんにもおおきなリスクを与えてしまいます。
貧血と脳貧血では対策方法がまったく違いますから、きちんと検査をして、フラフラの原因をつきとめましょう。
更年期障害
女性の場合、更年期というのは、閉経を迎える前後の期間の事を言います。女性ホルモンの分泌が少なくなります。
特に卵巣から分泌されているホルモンの量が少なくなります。これによって、普段はこの調整をはかっているホルモンとのバランスがくずれやすくなってしまいます。その結果、自律神経も乱れ、血圧の調節ができないなど、さまざまな症状をおこしてしまいます。
脱水による低血圧
脱水が低血圧の原因となる場合もあります。とても暑いところでの激しい運動や労働だったり、利尿作用のある飲み物や薬、血管を広げる薬などを使った影響や、出血や嘔吐、下痢などが考えられます。
水分が減ると血液が流れにくくなり低血圧になりやすいくなってしまいます。脳貧血は一時的に締結厚の症状がおこることが原因ですが、もともと血圧が低いことも、血圧の調節がうまくいかない原因となります。
低血圧の人は脳貧血がおきやすい
自律神経・ホルモンバランスの乱れなどにより、一時的に血圧の調節ができない事に加え、もともと血圧が低い人はさらにその影響を受けやく。脳貧血をおこしやすいといわれています。
低血圧という状態は、病気ではなく体質です。低血圧でも、何の問題もなく元気に生活している人はたくさんいます。
しかし、医師によっては、低血圧を生活習慣病としてとらえてる方もいるようです。
遺伝的な体質に加えて、次のような生活習慣が、低血圧になると考えられているからです。
- 不規則な食事
- 偏食
- 小食
- 塩分不足
- ミネラル不足
- タンパク質不足
- 運動不足
- お風呂が嫌い
- 日光にあたらない生活
- 湿度の高いところでの生活
- ストレスが続いている
- 無気力
これらのことが、心臓に力を弱くして、古い血液が静脈に滞り、全身の血液の流れが悪くなると考えられています。
そのため、脳へ送る血液の量も少なくなってしまい、脳貧血を起こしやすいと言われています。
お酒(アルコール)の影響
脳貧血の原因として、アルコールによる血圧の低下があります。
アルコールが私たちの身体に及ぼす影響はさまざまですが、血管を拡張させて血圧を下げたり、逆に収縮させて血圧を上げたりすることが、脳貧血の原因として考えられます。
お酒では一時的に血圧が下がる
アルコールによって血圧が下がる場合は、体質や飲む量など、いくつかのことが関係しますが、一般的には、お酒を飲むと血圧は下がり、飲む量が増えるにつれて上がっていきます。
急激に血圧が下がれば、脳への酸素が不足してしまう原因となり、脳貧血へとつながってしまいます。
脳貧血は成長期の子どもによく起こる
血圧を調整しているのは自律神経ですが、もっとも乱れやすい時期は思春期です。まだ自立心が成長しきっていないので、精神的に大きなストレスがかかりやすいためです。
さらに、下半身の血液を脳へ押し上げるためには、血管のまわりにある筋肉の働きが必要です。とくに「ふくらはぎ」は第二の心臓と呼ばれるくらい重要です。筋力の未発達によって、下半身の筋力が弱いことも、脳貧血を起こす原因のひとつとされています。
このように、脳貧血は成長期や、筋力の未発達な子どもの方が起こりやすいと言われています。
病気による脳貧血
何らかの病気が原因となっているのが症候性低血圧です。代表的なおもな病気は
- がん
- 糖尿病による自律神経障害
- 慢性肝炎
- 肝硬変
- 肺結核
- 脊髄癆
- 副腎機能不全
などです。また、精神安定剤を服用しても、脳貧血の症状が起こる場合があるようです。
脳貧血の原因 ~まとめ~
脳貧血は、貧血とは別で、一時的な低血圧によって脳へ運ぶはずの酸素が不足してしまう事を言います。
一時的に血圧が下がってしまうおもな原因は、以下のようなことが考えられます。
- 自律神経の乱れ
- ホルモンバランスの乱れ
ほとんどの場合は、一時的なもので、横になったり、かがんだ状態でいることで回復しますが、頻繁に起きたり、なかなか症状が回復しなかったり、気を失ったりした場合は、しっかりと検査をしたもらいましょう。
脳貧血をおこしやすい人は、以下のような人が考えられます。
- 男性よりも女性
- ストレスを多く抱える人
- 生活が不規則
- 睡眠不足
- 鉄分不足
- 成長期(思春期)の子
- 下半身の筋力の弱い人
- 妊娠後期
- 更年期
効果的な対処法や予防法は、まず原因をハッキリさせてから。まずは、クラクラ・フワフワの症状が貧血なのか脳貧血なのか。
そして、何が原因でそうなっているのか。しっかりと原因をつきとめて、クラクラ改善にお役立てください。
▼その他、脳貧血の対策についての記事
さいごに、脳貧血と貧血の原因は異なりますが、根本的な原因をたどっていくと共通点もあります。
その代表的なものが「鉄分不足」です。
鉄分には、健康面、精神面、美容面においてとても大切な役割がありますが、とても不足しやすい栄養素。積極的な摂取をおすすめいたします。
▼自然な食べ物で鉄分補給
参考書籍
- 『貧血と低血圧を改善する食事と生活』監修:目黒西口クリニック院長 南雲久美子
- 『うつ・パニックは「鉄」不足が原因だった』藤川徳美著 光文社新書
- 『血圧の話』国立循環器病研究センター 循環器病情報サービス
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